第5話 太陽の様な存在

 当然日々の練習は辛かった。私は補欠で、大会本番は先輩が主に出場する。キツい練習をしながら、やはり過去のことを思い出していまい体が硬くなる。打つ瞬間に目の前に昔の光景が映し出されるし、コーチにみられてるって言う視線を感じてしまう。もちろん幻想だ、だが私はずっとそれと戦っていた。


そんな時だった。

「ごめんごめん、今日からまた練習復帰するわ。」


 初めて会う女の先輩。セミロングで、少しパーマが入っている笑顔の綺麗な先輩だった。先輩はずっと実習に参加していて何ヶ月も練習に来ていなかったらしい。


「紹介するに、こっちはエースの渚。そしてこっちが恵ちゃん。」


「今度の大会がんばろうね、恵ちゃん!」


 ま、眩しい。太陽みたいだ。

 聞けば、前回の全国優勝者らしい。


 なんだろう、活気が溢れている、渚先輩がコートに入った瞬間、雰囲気がガラリと変わった。みんな明るい、この人がいるだけで皆のモチベーションが上がっていると言うのか?!



 その通りだった。どんなキツい練習でも、8コートの端から端まで聞こえる声を出してチームを活気付けている。


 私は渚先輩のプレーに見入ってしまった。


 だって本当に太陽みたいなんだもん。こっちまでつられそうになるじゃん。


 私は、いつもより強くラケットを振った。

 

 渚先輩は私を変えてくれる、私はそう思った。先輩からは、テニスは楽しい!誰にも負けないくらい楽しんでいる!って言うオーラが止め処なく溢れている。私のテニス人生でこんな人見たことない。


 みんながその太陽について行く。私も無意識のうちについて行ってしまった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最幸の幕引き ロッキーズ @ryulion

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ