第3話 人生最大のイベント

 「恵!とうとう来たね。決勝頑張ろう。」


 血の滲むような努力の末、やっとたどり着いた。私はもうすぐインターハイという山の頂上に立とうとしている。

 

 あの時の私とは違う。


 毎日怒られ続けて、指示待ちの強制労働者の様な毎日、なんのためにソフトテニスをしているのかも見失いそうになった日々。

 そして勇気を出して一歩踏み出したあの日。


 『上田・池上ペア』


 今までの出来事を思い出しながら、私はコートに入った。


 決勝戦のコートは予想以上に狭かった。少し強く打っただけでアウトしそうだ。緊張する、緊張する事はいい事。勝てる!って思っているから緊張している。勝てないと分かっていれば緊張するだけ無駄だ。


 大丈夫、大丈夫。


 それと、聞いだ事がある、普段の練習で打てている時を100%とすると、本番の試合では20%ほどしか発揮できないらしい。50%出せればいいものなんだって。

 確かにそうだ、本番はいつも上手くいかない・・・


「恵!しっかり!大丈夫だからね。」


 私はミスを連発していた。緊張からではない、目標が目の前に近ずくに連れて焦りが出てきたからだ。手に届く距離に目標物があればある程、私は行動が単純になっている様な感じがする。


私は何%発揮出来でいるのだろう・・考えたくもない。


(私はどうすれば・・・)


 相手の前衛は存在感が強い、大きな壁が立ちはだかっているみたいだ。相手のちょっとした動作で敏感に反応してしまいボールを吹っ飛ばしてしまう。今までの試合では経験した事のない感覚。


 そんな私に容赦無く"敗北"が突き立てられた。技術で負けたのでなく、明らかにメンタルの強さにで負けた。


 気づいた時には試合終了。全国優勝は夢で終わってしまった。


 努力は報われなかった。そう私は初めて挫折を経験した。


 その大会を最後に私は部活を引退し大学受験に専念する。それからテニスラケットは握っていない。


 挫折って苦い味がするんだね。

 

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