第2話

毎日の日課のように見ていた二人組YouTuberの握手会のイベントがあると告知の動画が上がった。


凛は早速申し込み、当選結果の日を心待ちにしていた。何となく仕事を流し、何となく帰ってYouTubeを見る。心には誰も入る隙がないくらい自分のことだけしかなかった。


そんな毎日を送りながら当選結果の日が来た。結果は当選。握手会は短いながら本人と話すことができる。凛はわくわくしながらその日を待った。


秋晴れの気持ちのいい夕方。黄昏が人々の影を長くし、思いがけず陽が肌を焼く。建物の外では握手会の時間を待つファンで溢れかえっていた。その中に凛も混ざって自分の番が来るのを待つ。


陽が完全に沈みそうになったころ、ようやく凛の番号が呼ばれて順番に並ぶ。ようやく毎日見ていたYouTuberに会える。緊張しながら列に並んで移動し、順番が来るのを待っていた。


長い列が流れるのは思っていたより早かった。どんどんと前に進み、凛は動画の中の人物の目の前に居る。握手をしている間、目が合っていたが緊張して何も話せなかった。


そんな凛の様子を見てYouTuberの誠は一言声をかけてくれて握手は終わった。優の前に行った時も何も話せず、力強く握手してくれる優がありがとうねと言ってくれて凛が待ち望んでいた時間はあっと言う間に終わってしまった。


握手会の帰り道、何も話せなかったことを後悔しながら何度も何度も握手会の時間を思い出していた。そういえば、何か音が鳴った。そうふと思い出すが何の音だったのか分からずじまいだった。


凛は家に帰ってから、YouTube専用のTwitterアカウントからリプを送り、今日1

日のことを思いながら動画を見る。本人を見た後に見る動画は特別だった。

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