第10話
それから僕たちは、しばらく話し続けました。僕のこと、あの晩のふしぎな出来事のこと、そしてそのもとになったあの古い電話のことなどです。そのうちに、彼女も少しずつ打ち解けてきてくれて、自分のことも少しは話してくれるようになりました。
「私、あなたがどういう人かって、ずっと思っていたんです。たったの一時間で、本当に、人が人をそんなに深く愛せるものなのか、知りたかったんです。祖母はきっと、あなたのことを一生忘れなかったと思います。でも、あなたはどうなのか、知りたかったんです。
約束の日まで、祖母にとっては何十年という長い間でしたが、あなたにとってはたったの一年です。忘れないでいる方が当たり前かもしれません。でも、あの頃の人ならともかく、科学全盛の今の人が、顔も名前もわからないし、おまけにまるで夢のような話だし、たった一年とはいっても、正気に戻ってからもずっとそんなことを信じ続けているなんて、その人を愛し続けているなんて、とても考えられなかったんです。
だから、あなたが来るなんて本気で思っていたわけじゃなかったんです。まさか、あなたが写真を抱きしめて、祖母のために泣いてくれるなんて、思いもしなかったんです。だから、とても嬉しかった。本当に来てくださってありがとうございました。祖母もきっと喜んでいると思います。」
彼女は少し照れたように言いました。
「いえ、さっきは取り乱してすみませんでした。僕だって、来るのが怖かったんです。もし誰もいなかったらどうしよう。それこそ、あれがただの夢だったってことになってしまったらどうしよう。そう思って、ずいぶん迷いましたから。僕こそお礼を言わなきゃいけないんです。来てくださって本当にありがとうございました。」
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