第5話
帰りは別にこれといったこともなく、夜の十一時ごろには、アパートにたどり着くことができました。明かりをつけると、部屋を見まわしました。六畳一間のリビングには、小さなテーブルと敷きっぱなしのふとん、枕元の普通の電話、それにテレビがあるだけです。ほかには何の飾りもない、我ながら実に殺風景な部屋です。僕は早速古い電話を壁に取り付けました。
最初のうちは、何か部屋の雰囲気にそぐわないような気がすることもありました。それとも、電話が部屋になじめずに困っているといった方が、確かかもしれません。でも一週間もすると、だいぶなじんできて、部屋に自然に溶け込むようになってきました。そうなるにつれて、また、あの暖かい感じがもどってきました。
一か月もすると、僕は誰もいない部屋に帰るのが、辛くなくなってきました。別にどこが変わったというわけでもないのに、ふしぎなほどさみしさが消えていたのです。僕はますますこの古ぼけた電話を大切にするようになりました。
そしてその電話を買ってから、ちょうど一年たった日でした。とてもふしぎなことが起こったのです。
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