4.1年後まで気を引き締めて
「条件があります」
「条件?」
「はい。今後殿下はとある娘に出会う事となります。その娘に恋をして、婚約者の私のことを邪魔に思うことになるかと思います。その時は婚約破棄をしてください」
殿下しばらく俯き、感情的にならないようにふーっと息を吐き出した。
「その話は、この間言っていた50回殺される話と同じか?」
「はい」
「君のその話が本当だとして、君は何度も同じことをして殺されたのか?例えば、俺にもっと好かれようとはしなかったのか?」
「いえ、私もさすがにそこまでの愚か者ではありませんので」
私は50回死ぬまでに詳細は省くが、足掻いた話をした。
最初の1~17回までの私は、殿下のことが好きすぎて狂っていたために、アタックの仕方を変えることしかしなかった。そのため、17回の死は愚かにもほぼ同じような死に方だったこと。
18回目の死だけ少し特殊だったこと。
19~50回は、何をしても変わらなかったこと。例えば、国外に逃亡してもダメだったこと、自殺しようとしたが、よくわからない力によって死ねなかったこと。
50回全てに共通することは、絶対に殿下に殺されて、死の2年前の朝に戻ってくること。
殿下は話を聞いて、また俯き、考え始めた。
「僕は…ベアトリーのことが嫌いだと思ったことはないんだけどな…」
殿下はそう呟いた。それに一人称が僕に変わるときは、落ち込んでいる時だ。
私は、俯き考える殿下を見ながら、落ち込まれる理由を考えていた。
私達がカフェを出るとき、かなり陽が沈んでいた。来たときはお昼だったのにと思っていると、
「ベアトリー。君の話を全て信じたわけじゃないけど、条件を受け入れようと思う。君が苦しんでいたことは、君の目を見て本当だと思ったからね」
「殿下、ありがとうございます」
どうにか殿下に条件をのんでもらえて私はとりあえずホッとした。
しかし、1週間前の殿下とは様子が違っているように感じたのは、気のせいだろうか。殿下にもああいった一面があったとは思うが…まあ、今は気にしないでおこう。
私は娘の現れる1年後に向けて気を引き締めた。
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