3.条件があります
私は殿下が話を受け入れてくれなかったことに、どうしたものかと頭を悩ませていた。嫌いな者から言われてなぜ嬉しくないのだろう?考えてみろと言われたが、何を考えればいいのだろう?そんなことばかり考えていた。
父は私のそんな様子を見て、とても心配していた。
「ベアトリー、殿下が来てからずっとそんな様子だが、何か言われたのかい……」
「あらお父様。心配をお掛けしてしまって申し訳ありません。殿下が全く婚約破棄を受け入れてくれず、どうしたものかと悩んでおりました」
「殿下はベアトリーのことをすごく好いていらっしゃるようだからね…なかなか受け入れ難いのかもしれないね。ま、父ほどベアトリーのことを愛してはいないだろうけどね!」
私は父の言葉にまた疑問符が浮かび上がった。
好いてる?私のことを?
50回も嫌いだと言われたのに?
それから私は3日ほど考えたが答えが出なかった。
私が1週間ほど部屋に籠って出てこないという噂が、父により皇帝陛下の耳に入り、ついでに殿下にも入ったみたいで、また連絡もなく乗り込んできた。
「おい!ベアトリー!出掛けるぞ!」
「御機嫌よう殿下。お帰りください」
「なっ!?お前というやつは、何故そんなに俺に冷たいんだ!」
「殿下が2回も連絡もせずに乗り込んでいらっしゃるので、それ相応の対応をさせて頂いております」
「皇子殿下の俺が事前連絡なしに来てはいけないのか!?それに俺は婚約者だぞ!」
「そうですわね。"今"は」
「"今"は、とはなんだ!まだ婚約破棄をしようと思っているのか!?」
「私が部屋に籠って何をしていたのか分かりませんか?殿下に婚約破棄をどうすれば受け入れてもらえるかを考えていたのですよ」
「な、何で……」
殿下は青い顔をして地面に膝をついた。
私はその姿に驚いて、思わず駆け寄ってしまった。
その行動に殿下も驚き、私も意味がわからなかった。50回殺されてもまだ愛しているのかと…そう思うほど早く、体が勝手に動いた。
「殿下……私達はよくお話をした方がよいかもしれません」
「何の……?」
「私と殿下の今後について」
私達は殿下の用意した馬車で街に出た。殿下は馬車の中で私が元気をなくし、部屋にこもってしまったと聞いたから、元気になってもらおうと外に連れ出したかったそうだ。殿下にこんなことしてもらったことがあったかなと思いながら、私は殿下の話に耳を傾けた。
街に着いて、殿下に連れられとあるカフェに来た。そこは私のよく行くカフェで、殿下とは来たことがないはずなのだけど。
「ベアトリー、先程の話なのだが。私と君との今後についてだったか?君の考えを聞かせてくれないか」
突然紳士的になった殿下を見て、あぁこういうところを好きになっただったなぁと思い返した。彼は賢いのに感情に流されてしまうところがあって、よくやらかしちゃうのよねと、ふふっと笑っていた。
「ベアトリー?どうして笑っているんだ?」
「あら殿下、申し訳ありません。少し思い出して笑ってしまいました」
「まぁ、その、怒っていないのならよい」
本当にどうして今日はこんなにも優しいのだろうか?と不思議な気持ちになりながら、私は殿下の目を見て言った。
「殿下!私達がこのまま婚約破棄をしないとおっしゃるのならば、条件があります」
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