2,婚約破棄は絶対条件なので
婚約破棄が皇子殿下に伝わった次の日、皇子殿下が家に乗り込んできた。事前連絡などなくだ。不躾なやつだこと。
バンッ!と扉が開いて、私の自室に乗り込んできた。扉潰れないかしら?と心配するほど、連日バンッ!という音を聞く気がする。と、私がそんなことを考えていると、王子が言った。
「ベアトリー!俺は婚約破棄しないからな!」
「あら、御機嫌よう、殿下。それと何故です?」
「何故です?って……こっちが理由を聞きたいものだ!いきなり婚約破棄がしたいとはどういうことだ!説明しろ!」
これが次期国王かと思うと頭が痛くなるくらい、やはり不躾な男だ。私は腹がたったので、嘘などつかずに話すことにした。
「貴方に殺されるからです」
「なっ!?俺がお前を殺すって?」
「はい。もう50回殺されましたから、逃げることを許して頂きたいのです」
「50回……?では何故お前は生きている?全く話がわからん」
「これは呪いですよ。何度も同じ時間に戻り、何度も同じことを繰り返すようになっているのです」
皇子は全くわからないといった顔をしている。
そりゃ分かるわけがない。理解できるのならば、私が何度も殺されることもないだろうから。
「私は2年後に貴方に殺されます。それに貴方は私ではなく、他の方を愛することになります。ですから、今から離れましょうという話です。ご理解頂けましたか?」
「…………やだ……」
小さな声で皇子が呟く。
「今何と?」
「嫌だと言ったのだ!」
何故か皇子が怒り出した。
「本当かもわからないことで、何故婚約破棄せねばいかんのだ!嫌だ!」
「体裁を気にするのでしたら、殿下から婚約破棄したことにして頂いても構いませんよ…」
「そういう事を言ってる訳じゃない!」
「では何を……」
本気でなぜ怒っているのかわからなかった。殺される時に毎回、お前のことがずっと嫌いだったと言われ続けてきた私にとって、まず婚約破棄が通らないことも意味がわからない。喜んで受けてくれると思っていたのに。
私が俯いて考えていると
「もう1度よく考えるんだな!俺は婚約破棄などしない!」
そう言って帰っていった。
私は訳の分からないまま、その場で固まることしかできなかった。
「婚約破棄は私の今後を考えると絶対条件なのに……どうしよ……?」
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