50回殺された公爵家の娘

月白藤祕

1.50回目の死

「私は貴方様を愛しています。ですから、最後に貴方様から死を頂きたいのです」


女は狂ったように叫んだ。男は狂ってると吐き捨てながら、女の首を刎ねたのだった。




私はものすごい激痛に目を覚ました。

全身からは汗が吹き出し、涙がとまらない。

私が起きる時に叫んだのか、部屋の外からこちらに向かって走ってくる音が聞こえる。


「あぁ、また帰ってきてしまった…」


私、ベアトリー・シュナイツは、首を刎ねられたあの日から2年前に戻ってきていた。なぜ分かるかって?それはこれが50回目だから。そして、この部屋に向かって走ってくる人間は私の父と使用人が2人。毎度のことで、慣れてしまった。


バンッ!

「ベアトリー!大丈夫か!?」


そう言いながら私に駆け寄ってくるのは、父だ。父は亡くなった母を思い出す私を大事にしてくれる。


「えぇ、大丈夫です」

「怖い夢でも見たのかい?涙が……」


父は私の涙を拭って、優しく抱きしめた。私は父を抱き返し、


「お父様、お願いがございます。私と皇子殿下との婚約を解消して頂きたいのです」

「どうしてだい?あんなに皇子のことを好いていたじゃないか」

「何度も皇子に殺されるのです。もう嫌になりました」

「それは……夢の話かい?」

「いいえ、夢ではなく……呪い…です」



あの日私が泣きながら言った言葉に父は困惑したが、受け入れて、皇子に婚約破棄をもちかけてくれたそうだ。公爵家の立場が危ぶまれるかとも思ったが、そんなに脆弱なものではないそうだ。


これからは全てを公爵家に捧げようと誓い、眠りについた。

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