人間

 すやりすやりと優人は少年から青年に成長した。学校では特別目立つわけでもなく普通の青年。教室のロッカーに腰かけて友人とゲームをしていて口論になる。


「お前、下手くそなんだよ! 足引っ張るなよ、リセットして最初から育てなおせよ!」


 優人は友人に文句を言われて頭に血が登る。


――リセット?


 ロッカーの上にあったペン立てからハサミを抜き取ると、友人の喉に突き立てた。


「それなら、お前をリセットしてやるよ」


 教室に響く悲鳴に煩そうに顔を歪めたが、優人は普段と変わらない様子でポケットから復活ボタンを取り出し、倒れている友人の上に復活ボタンを置いて押した。


 いつもと同じく、復活ボタンの電気がぴかっと点いた。


「人間は大きから時間がかかるかな」


 首に鋏が刺さり血を流して倒れた友人の傍らで、何事もなかったようにゲームを始めた。その異様な様子に、駆けつけた教師も息を呑む。


「救急車と警察に連絡を! ゲームを止めて、こっちへゆっくり来なさい!」


「はい」


 大人しく立ち上がった優人は苦笑いを浮かべながら教師のもとへ歩み寄ると、教師に腕を掴まれてすぐにその場から連れ出された。


「先生? ゲームは没収ですか?」


 腕を緊張しながら掴んでいる教師に、優人は苦笑いを浮かべて質問した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る