休日に優人と母親はペットショップに行き猫の世話に必要なもの一式と子猫のアメリカンショートヘアーを買う。ふわふわの子猫に優人は夢中になった。


「お前の名前はトワだぞ!」


 ミルクをやって一緒に遊び、よちよち動く姿はとても可愛い。だが猫の成長はあっという間で、トワの体が随分と大きくなるにつれ優人の興味はだんだんと薄れていく。


「優人! トワに御飯あげたの?」


「まだ! ママあげといて!」


 トワと遊ぶことも世話をすることにも飽きてしまい、トワの世話は母親に任せきりになっていた。ゲームに夢中になっている優人の部屋にトワがドアの隙間から入って鳴く。


「どうしたトワ? ご飯ならママにもらえよ。忙しいんだ」


 トワはかまって欲しくてゲームをする優人に擦り寄りトワの長い尻尾が、ゲーム機本体を倒してしまった。


「あっ! 何するんだよ!!」


優人は消えてしまったゲームに怒り、なにも分からず甘えた声で鳴くトワを殴りつけ文句を言う。


「セーブしてないのに……」


 トワは怯えたように部屋の隅で鳴いて、近付いてくる優人に全身を膨らませて威嚇する。優人はトワの威嚇に怯むことなく近付いてトワの喉を掴んで締め上げる。


「悪い奴だな……トワもリセットして育てなおしだな」


 舌を出し手足が伸びてこと切れたトワをベッドに置いて、優人はいつもの通り復活ボタンをトワのお腹の上に置いて押した。


「あれ、復活しない? トワは大きいから時間がかかるのかな?」


 そのまま復活ボタンをトワのお腹に乗せてベッドに置いたまま、消えてしまったゲームを再び始める。母親が餌の準備をしない優人の代わりにトワの餌をもって部屋に訪れた。


「トワーご飯よ。優人、ちゃんとお世話しないと……」


 母親がベッドに舌を出して横たわるトワの姿を見つけ、持っていたトワの餌を床に落とし駆け寄る。


「トワ!! な、何があったの優人!?」


「あぁ、ゲームを消しちゃったからトワのことリセットしたんだ。復活ボタン押したんだけど、まだ時間かかるみたい」


 母親は笑顔で話す優人に恐怖を感じ、何も言わずに部屋を出て行った。

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