少し大きくなった優人はカブトムシに興味がなくなり、あっけなく何代目かのカブトムシは、優人の手によって飽きた玩具と同じようにゴミ箱に捨てられた。傍らで虫かごを片付ける母親にお願いをする。
「もうカブトムシを復活させるのは飽きたし、今度は犬とか猫飼いたいな!」
「お世話大変よ。死んじゃったら……」
母親はカブトムシが死ぬたびに生きたものに取り替えていたのを知っている手前、言い淀むが優人は首を傾げて笑顔で言う。
「動かなくなったら、復活ボタンを押せばいいんだよ」
さも当たり前のことのように母親に話す優人に母親は苦笑いを見せたまま、それ以上は何も言わなかった。
その晩、帰宅した父親に母親が優人のお願いの件を話す。
「優人、今度は犬か猫を飼いたいって言ってたわよ」
「なんだ、カブトムシはもういいのか? まあ、犬や猫ならカブトムシより寿命が長いし」
「世話が大変じゃない! それに死んだ時、どうするのよ!」
「その時はその時だよ。猫だったら散歩もないし、いいんじゃないか?」
父親の言葉に母親もそんなに世話に手が掛からないならと死については深く考えることを止めた。
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