7.少年たちと秘密の計画
「まあ、今回のパフォーマンスである程度牽制出来ただろうし、早々に囲いこんで手に入れるよ」
「いや、何怖い事サラッと言ってんだよ。手に入れるってなんだよ!」
「大丈夫。俺公爵家だし。子爵家相手なら問題無い」
「攫う気か!何するつもりだお前!?」
「なんでそうなるんだよ。勿論」
「勿論?」
「婚約する」
「.....こ、婚約?なんで?」
「婚約者なら堂々と会えるだろ?」
「会ってなにするんだよ。」
「調べるんだよ。膨大な魔力量の秘密を」
「そ.....それ。ミリアーナ嬢に失礼じゃないか?そうだよ、好きでもないのに恋しました~なんて。騙して。俺だったら死ねるわ」
「騙してなんかないさ。好きだよ。彼女の魔力」
「おっ前!」
「それにもし解明出来たら魔力過多症の有効な回避方法が見つかるかも知れない。魔力の放出をしなくても良い方法が見つかるかもしれない」
ダヤンはソファの背もたれに背中を付けレジンを見据える。
「俺はさ、今手詰まりなんだよ。歳を重ねないと魔力量はどうにもならない。そんな不確かな前にも進めない今の状態を抜け出したい」
「それでも!」
「レジンは良いやつだな」
「違う。普通だ」
「王族らしくない」
「そうじゃない。 王族とかの前に、俺もお前も男だろ?」
「.........」
「女の子泣かすのは、駄目だろ」
「可愛いな」
「刺すぞ」
「お前の言いたい事は判るよ」
「大事にしてやれよ。演技でもなんでも」
「ふふっ」
「ちっ!やな奴に見つけられたな彼女。よりによってこいつか。.................でもさ」
「なんだ?」
「案外あっさり落ちるかもな」
「何が?」
「勿論、お前が、だよ。ダヤン」
第2王子の10歳の誕生日パーティーの数日後、マクロサーパス公爵家よりカサナロ子爵家へと正式な縁談の日付が通達された。
****
王都からカサナロ領は馬車で約5日の道のりである。
間に四度宿を取り、無事に領内に戻った。
馬車に揺られるのはなかなかハードである。
通常ならば疲れが溜まるものだが、カサナロ家の者は割と元気であった。
これもハサルの花のお陰か、馬車内には常にハサルのポプリが飾られている。
「はー、帰って来ましたわねー。あっという間でしたね、父さま。父さま?」
「あ?うん。帰って来たねー。どうだい?疲れたかい?」
「いいえ。全然!やっぱりハサルの花は疲労回復の効能もあるんではないかしら?」
「うん。あり得ない事じゃないだろうね。しかしこの花は凄いね。まるで奇跡だ」
「そうですね。父さま。ハサルは昔からカサナロにしか咲かなかったのでしょうか?」
「んーと言うか、私が小さい頃は無かったよ。そうだな。それこそほんの10年前くらいからじゃないかな?領民の農夫の方がハサルの花を持って来たんだ。突然森の池の辺りで大量に咲き出した。この花はなんだろう、とね」
あれよあれよと言う間に池は花に囲まれた。
「するとね、池がとっても綺麗になったんだよ。元々農耕用の溜め池程度の湧き水も出ていない水だったし、藻が沢山繁殖して、水浴びなんてとてもじゃないが出来ない汚い池だったのに」
池は透き通る水に浄化され、今では底が見える程となる。
「あまりに不思議だったので、花について可能な限り調査してもらったらやはり浄化作用があると認められて。それから繁殖力も旺盛だったから栽培に踏み切ったんだけど.....」
カサナロの小さな領内でしか育たなかった。理由はわからなかった。
特別な肥料でも水でも無く。ハサルの花は年中咲き乱れる。暑さも寒さも関係ない。
通常ならば当然魔術か魔具が考えられるが、そのような気配も無いと言う。
育つ理由がわからない花。
「はじめは、怪しいしちょっと怖いなーと思っていたんだけどね」
「僕もそうです。幼い頃、気づいたら凄く増えていて。長い間咲き続けるし。かと思ったら突然枯れて、いつのまにか同じ所にまた芽が出ていてすぐ大きくなるし。種で増えるとは言われますが根だけでも増えるし。なんだか仕組みの解らない花ですから」
兄のハルトが頷きながら返す。
「そうなんだよねー。解らないんだよ。だけどなんかね.........悪いものじゃ無いことだけはわかるんだー」
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