3.第2王子レジン

 そうこうしている間に時間は過ぎ、第2王子レジンの誕生日パーティーが始まった。


 周りは子供達だけの席が設けられ、広い王宮の庭は沢山の人で埋まり、付き添いの親や親族達は別に設けられたテーブルで各々の交流を深める。


 子供達もテーブルの上にサーブされた色とりどりのクッキーやケーキ、フルーツなどに目と口を奪われ、楽しげに隣り合う子同士でお喋りを始める。


 爵位の違いは少々あるが、ミリアーナが座る席は高位とはかなり遠く、気さくな子も多かった。

 ミリアーナは左隣の同じ子爵の令息と右隣の男爵令嬢とケーキについてワイワイ話していた。


「このケーキは絶対クリームの中にペトの実のペーストが入ってますわ。すごく香ばしいもの!そして美味しい‼︎」

「確かに香ばしいね。でもペトなんてよく知ってるね?あんまり出回らないから凄く高いって父が言っていたけど。君の領地にはあるの?」

「あら、ペトって扱いが大変だから出回らないんじゃなかったかしら。ほら、硬い身の外がネバネバしてて手がかぶれるとか何んとか....」

「ネバネバしてるんだ。どんな木になってるんだろ?わたくしはどこかのお土産だと朝食に何度か出していただいたの。バターと蜂蜜が相まって凄く美味しくて、パンを3個も食べちゃいました!」


 など、割と砕けた会話がミリアーナのテーブルではされていた。


 その時、わっと前の方から歓声が聞こえる。

 どうやら本日の主役、第2王子レジンが会場の庭に現れたようだ。


 護衛の近衛騎士を引き連れ颯爽とこちらに向かって歩いてくる少年。その後をその実母である王妃が続き、周りを侍女や護衛が固めている。


 一団が最前列のテーブルの前まで来ると侍女が椅子を引き、王妃が腰を掛けた。


 王子はそのまま設置されていた階段上にある台に登り、くるりと向きを変えると沢山のテーブルを見渡し、しっかりとしたよく通る、それでいて楽しげな声でパーティーの開始を告げる。



「本日はよくお越し下さいました。僕はバトワージウ王国 王子のレジンと申します。今日は僕と一緒に誕生日をお祝いして下さい。一杯お話しましょう!」


 そう言うとレジンは勢いよく手を振ってニカッと笑った。


 バトワージウ王国第2王子は人懐っこい10歳の気持ちのいい男の子だった。



 王子が椅子に座ってお茶を飲み始めると、高位の令嬢や令息達が挨拶の為席を立ち始める。


 にこやかに対応するレジンは流石王子だけあって堂々とした姿だ。

 きっとこの中から将来の側近や果ては伴侶となる令嬢が決まるのだろう。


 高位の貴族からすればこの場は所謂集団お見合いだ。

 王子とまで言わなくとも公爵や侯爵の嫡子であれば選り取り見取りである。

 もちろん嫡子以外でも家と家の繋がりを求め子が婚約を結べば、ビジネスパートナーに充分成りうる。

 高位であればあるほど貴族足らん事を、子は進撃に受け止めなくてはならない。


 そんな令嬢や令息を遠くの席から眺めていたミリアーナは、勿論そんな事は一切考えず、ボンヤリと先程の壇上の王子の姿を思い浮かべていた。



「.......以外と普通?」


 と失礼な事を考えていた。



 レジンは金茶髪に赤茶の瞳。顔のパーツは整っているが割とどこにでも居そうな顔であった。

 王妃は明るい金髪碧眼の美女で既に3人の王子を産んでいる。


 王太子の第1王子は、母と同じく金髪の濃い青を持つ美麗の青年であった。そして弟の第3王子も同じく淡い金髪碧眼の可愛らしい天使だと噂されていた。


 そう。第2王子のレジンは完全に王である父とそっくりであった。


 だが、別に虐げられている訳でも無く、王妃からはどちらかと言うと


「もう、どんどんあの方に似てきて、うんっ可愛い!」と毎日ムチュッと頬に熱いキスを送られている。


 そんな訳でレジンは容姿のせいで不貞腐れる事も無くひん曲がる事も無く、割と真っ直ぐ育ってるだった。

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