第10話

「嘘?」

「上書きされたテープから映像をサルベージしたなんて嘘さ。そんな技術があるなら特許を取ってるはずだろ」

「確かにそうですね」

「私は子供の頃『のっそりへちま島』の録画を親に見せてもらったんだ。それですっかりこの番組のとりこになってしまった。ところが後になってから、この番組のかなりの部分が上書きされて消えてしまった事を知ったのだ。それ以来、消えてしまった映像を見たいと切望していた。この歳になってからその夢を権堂君が叶えてくれた時は嬉しかったよ。しかし、彼のソフトも完璧ではなかった。抜け落ちていた回があったんだ」

「今、再生したのがそうなんですか?」

「そうだよ。これを見るためにこのワームホールを借りたんだ」

「はあ? 武器の密輸では……」

「武器の密輸? なんのことかね?」

「あ!! すみません。言い間違えです」


 どうやら、武器の密輸は権堂氏の思い違いのようだな。


「その……映像を見るためだけにここを借りたんですか?」


 しかし、金持ちのやることはわからん。


「君は勘違いしているようだね。私がワザワザ地球からこの映像を持ち込んだと」

「違うんですか?」

「この映像はここで入手したんだ。いやここでないと手に入らないんだよ」

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