第9話
言われるままに僕は井上さんの横に座り人形劇を見ていた。それは一話十五分の番組を十話分編集したもので、終わるまで二時間近くかかった。
「どう思う?」
再生が終わった途端に井上氏が訪ねてきた。
「どうと言われましても」
「退屈だったかね?」
「いえ!! そんな事は……」
「いや、誤魔化さなくていいよ。興味のない人にはつまらない映像だという事は理解している。ただ、これだけは覚えていた方がいい」
「なんでしょう?」
「私のようなマニアにとって、この映像は大変な価値があるのだよ。君は権堂君の会社から出している映像ソフトを私達がいくらで買っているか知ってるかい?」
「いいえ」
井上さんの言った金額を聞いて、僕は心臓が止まりそうになった。それだけあれば、一本のソフトで開発済みの小惑星が一つ買える。
「今君が見た映像は、この前の上映会で上映されたエピソードよりかなり前の回なんだ」
「はあ、そうなんですか」
「この部分は権堂君の販売しているソフトから抜け落ちていたんだよ。サルベージに失敗したとか言ってね」
そう言えば上映会の時、そんな事言ったな。
「テープの痛みが激しいからとか」
「あれは嘘だよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます