第8話

「あわわ!! ぼ……僕はその」

「怪しい奴だ」


 男は問答無用で僕の襟首を掴み持ち上げた。

 そのまま部屋へ連れ込まれる。

 マシンガンを構えたギャング達に囲まれてハチの巣に……と思いきや、部屋の中では、大型ディスプレイの前で寛いでいた井上さんが、ぽかんとした顔でこっちを見ていた。


「じいちゃん。こいつが立ち聞きしていた」


 じいちゃん? という事はこのゴリラ男は井上さんの孫なのか?


「芳雄。その人はお客さんだ。すぐに降ろしてあげなさい」


 ゴリラ男は素直に僕を降ろした。


「井上さん!! 今、この部屋から銃声が」

「銃声? ハハハ。これだよ」


 井上さんは大型ディスプレイを指さす。

 ディスプレイにはこの前の上映会で見た人形劇『のっそりへちま島』が映っていた。

「さっき銃撃のシーンがあったから、それを聞いたのだろう」

「え? そうだったんですか?」

「ちょうどいい。君も見て行ってくれ」

「はあ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る