第7話

 僕はステーションに呼びかけてみた。

 井上さんは手が離せないらしく、管理コンピュータが代わりに応答してエアロックを開いてくれた。

 宇宙ステーションの内部は簡素だった。エアロックを出ると飾り気のない通路が続いている。コンピュータに案内された部屋も机とパイプ椅子があるだけ。調度の一つもない。

 しかし、井上さんは他の事に金をかけていた。通路も部屋も床には一Gの重力が作用しているのだ。高価な慣性制御システムを惜し気もなく使っているのだろう。その分、調度に回す金がなかったのだろうか?

 それにしても、いつまで待たされるんだろう。この部屋に通されてから小一時間経つ。

 それに尿意を催してきたのでコンピュータにトイレの位置を聞いて部屋を出た。

 用を済ませて部屋に戻る途中、人の声が聞こえた。一つの扉から漏れているようだ。

 この扉の向こうに井上さんがいるのか?


 ガガガ!!


 なんだ!? 今の銃声は?


 もしや、この部屋で武器の取引があって、商談がこじれて銃撃戦になったのか?


 逃げようか? いや、もう少し様子を。


 ドアに耳をつけてみた。


「そこで何をしている?」


 背後からの声に振り向くとゴリラのような大男が立っていた。

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