第4話

 だが、井上さんが借り手であることは翌日には発覚してしまった。

 言っとくが僕は守秘義務はちゃんと守った。ばれてしまったのは……


「いつからこの会社は別荘の管理までやるようになったのです?」


 権堂氏がそう言ったのは、僕のオフィスでの事。テーブルの上には昨日井上さんが権堂氏に渡したメモがあった。それに記されているのは紛れもなく僕のアドレス。ばれたのは井上さんのうっかりであって、決して僕のせいではない。


「確かに井上さんにワームホールをお貸ししました」

「やはりそうでしたか。では、会わせてください」

「緊急の用事でなければ、誰とも会わないと仰ってましたが、どのようなご用件です?」

「それはですね……用件を言えばすぐに通してくれるのですか?」

「いいえ。用件を井上さんにお伝えして、井上さんが納得していただけたなら、お通し致します」

「それでは困る」


 権堂氏はしばらく押し黙っていた。

 そのまま、沈黙が続く。


 まいったな……何か喋ってくれないと……この沈黙は耐え難い。


 ちょうどいいタイミングで女房がお茶を持ってきてくれた。

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