Alius fabula Pars41 秘匿された場所で

聖魔法王国アルモニアと言う国の王都イグレシアにある、とある屋敷では秘匿された組織が密かに行っている儀式がある。


それは父から娘へ伝授された魔法を使い、肉体の部分的なを変貌へんぼうを行うのだ。


変化の魔法とは違い、元に戻る事は出来ないが依頼者の要望通りの身体に変える事が出来る非常に特殊な魔法の為に全て秘匿されているのだが、この屋敷の門をくぐる事が出来るのは"会員"の推薦者だけだ。


女性にとっては究極の魔法もしくは至高の魔法と呼ばれているが、具体的な魔法名などは知らされていない。

食道楽の過ぎた者達が、以前の美貌を取り戻して同じ美食を堪能出来るのだから、噂が噂を呼び会員の応募者が後を経たない。


しかし、実際に会員になるには厳格な審査が行われているので、その存在を知る者は少ない。

一部の貴族は大金を要求され借金をしてでも行うのは、屋敷を出ると以前の容姿とは違い美しく変貌させた女性が満面の笑みで戻ってくるからだ。


もっとも、五回に一回の割合で男性の出入りも有り、醜い容姿が別人の姿で出てくると言う。


豪奢な作りの門の前には門番が警備しており出入りする者は"例外無く"検閲されると言う。


国王とディバルは屋敷の責任者と邂逅した。

「お待ちしておりました、お父様」

「ああ、話は聞いていると思うが、友人のディバルにお前の魔法を見せて欲しい」

「ディバルだ。よろしく頼む」


ジッとディバルを観るはこの屋敷の責任者であり国王の次女であるベルダーは、人族で言えばまだ成人前の幼女に見えるが、実際はエルフの血が影響していて、既に齢九十歳を越えている。

薄桃色の髪と漆黒の瞳を持つ少女は問いかけた。


「初めましてベルダー・シャイニングと申します。ディバル様はわたくしの魔法をご覧になりたいそうですが、理由をお聞きしてもよろしいですか?」

見た目は幼くとも王族であるベルダーのしっかりとした質問だった。


ディバルは国王の顔を見た。

それは、お前説明してないのか?の意味だった。

国王はうなずいた。

それは、大丈夫だ。娘は口が硬い。と言う意味だった。


二人の思考は噛み合っていないが、場の雰囲気を察してディバルが説明した。


「君が魔法を行使して肉体を変化させる行為を実際にみてみたいからさ」

「わたくしの魔法は、父とわたくししか使えない魔法ですが、ご覧になられても意味は無いかと存じますが・・・」

「ん〜」

ディバルが返答に困っていると国王が切り出した。


「ベルダー。これは極秘だぞ。ディバルは自力で我らの魔法が使える様になったらしい」

「まぁ‼︎」

驚愕するベルダーだ。


「まぁ、使えるが使った事はないのが事実だ。そこで友人の君の父上に相談してな、別の大陸で君と同じ仕事をする為に君の仕事ぶりを見学したいのさ」


無表情で聞いていたベルダー。


「かしこまりました。その様な理由が有ったのですね。お父様、この件。お母様はご存知なのですか?」


「も、勿論だとも。話しを聞いただろ?」

「わたくしがお聞きしたのは、見学でしたわ。別の大陸で同様の事をなさるとは聞いてませんが⁉︎」


その表情で内緒にしていた事を腹立たしく思っていると理解し、友人の手前どのように言い訳するか焦っている国王を察して説明するディバルだ。


「ベルダーよ。それは問題ない。サンクタ・フェミナも納得してくれる言葉を教えよう」


この国の王家は上下関係が他国とは違うのだ。


「それはどの様な言い訳でしようか?」

身長差はかなり有るが上から目線のベルダーだ。


「ラソンに聞けば答えてくれる」


両親と姉妹以外からその名前が出てきた事に驚愕したベルダーだった。

ディバル的には知る必要が無いと言う事を教えてくれると言う意味で言ったつもりだ。



「そ、その名は・・・」

「ベルダー、それ以上必要か?」

父からの質問にかしこまって礼を取る娘だ。

「承知致しました。どうぞこちらへ」


施術室近辺は暖かくされており、全裸で施術しても寒さを感じはしない様になっている。

一同が会しているのは被験者との面談室だ。


「被験者には口頭で具体的に変身したい箇所を聞きます。多いのが顔の周りから顎、首にかけて。二の腕、お腹周り、太ももの除去が多いです」

「それは想定していた。問題は"寄せて作る行為"だ」

「ハイ。それはこちらの雛形から選んで頂いております」

カーテンに遮られた場所には沢山の胸が有った。


「こんなに多いのか⁉︎」

「ハイ、ご要望に応える為に用意した物で御座います」


目の前に並ぶのは十体の胸像だ。


「まだ、こちらの部位も有りますわ」

ベルダーの指示で別のカーテンが開いた。


「うわっ、コレは凄い」

臍から膝までの臀部像が五体並んでいた


「なぁ、ベルダー。コレ複製しても良いか?」

「複製ですか?お時間がかなり必要かと」

「イヤ、今ココで魔法で複製するからさ」

「ええっ!複製の魔法までお使いになるのですかぁ⁉︎」

母と義母が唯一使える事は知っていたベルダーだ。


許可を得て複製し、ハコの中に入れたディバルだ。


「ディバル様、宜しければ魔法を確認してもよろしいですか?」

「魔法の発動だな?」

「ハイ」


ベルダーの指示通り、数種類を魔法を順番に発動させるディバル。


「確認しました。本当に出来るのですね」

「俺も驚いたぞ」

側で見ていた国王だ。


「では今回の施術では助手として参加して頂きます。わたくしは右側を施術しますので、ディバル様は左側を施術して下さい」

「左右違っても良いのか?」

「後から調整も出来ますし体験されたいのですよね?」

「その通りだ」

「では、ご一緒に」


施術室では説明を受けた女性が全裸でうつ伏せになっていた。

全身を洗い、目隠しした状態で横たわっている。

目隠しするのは魔法を秘匿する為である。

足元には顧客の要望する胸像と臀部像が置かれてあるので、目視で確認する。


手洗いをして左右に並び立つ。

国王は頭側から見ている。


「では始めます」

ベルダーが開始の合図を放ち足首から脂肪の除去を行って行く。


膝下の除去は問題無く進み、第一関門の臀部だ。

事前の説明では太ももの脂肪は除去せずに、臀部へ移動させると言う。

今回の場合は、貧弱な臀部をふくよかにさせる為左右を合わせなければならないので、一旦脂肪を集めるのだ。


次は背中から脂肪の除去だ。

それが終わると腰回りの脂肪を臀部に移動させて整形に入る。

丸く型を整えながら整形し、重要な太ももの境界線だ。

段差を付けて盛り上げてるのが、流行りだと言う。

仕上げはベルダーに見てもらい、微調整を行う。


女性に仰向けになってもらい、施術を行う。

背面と同様に足首から除去を始めて下半身は問題無く終わる。


もっとも重要な胸部だが、今回の場合はかなりの膨らみを要望されている為、腹部と二の腕に顎周りからも脂肪を集める事となる。


ベルダーの指示通りに腹部の脂肪を集めるのだが、うっすらと脂肪を残すことが重要だと言う。

次は腕だ。

これは全ての脂肪を移動させる。

そして首だ。

頬あたりから少しずつ移動させ、顎からは綺麗に無くなる様に移動させる。

脇面からも徹底的に移動させて全て胸部に集める。


集められた脂肪は胸部で一つの山の様になるが、指で二つに割る。

そして型作りだ。

女性が最もこだわるのは型だと言う。

まずは片側をベルダーが形成させて行く。

ある程度の型になると指示が出た。

「では同じ様に」


見よう見真似で形作って行くディバル。

初めてのパイ作りだ。

先程見ていたベルダーの手捌きを思い出して形を整えていく。


ディバルが両手を離しベルダーを観ると笑顔で応えた。

「では最終調整に入ります」


この段階で施術台の可動を行う。

平な施術台が椅子状に変形させる。

これは大量の脂肪を重力により動かせ、最終形成を行うのだ。

全方位から胸部を眺めるベルダーが微調整して、両手で片方づつ覆った。

後から聞いたが、巨大化した胸部に乳腺を増殖させる行為だと言う。


「最後に仕上げを行います」

輝く両手を胸部の先端に当てる事数秒。

手をどかすと、先ほどまでとは違い赤子の様な先端が現れた。


「終了です」

そう告げるとベルダーにディバルと国王も退出して、係の者が布で女性を覆った。



「どうでしたか?」

「フム、何事も経験だな」

「でも初めてにしてはお上手でしたよ」

「君はどの位で慣れたか?」

「余り覚えてませんが一年程だったかなぁ?」

「日に何人も来るのか?」

「来ませんよぉ、私は姉で練習しましたから」

サラッと言って笑っているベルダーを苦笑いでみている国王だ。


「今日はとても参考になったありがとう」

「ディバル様、別の大陸で同様の事をされるとうかがいましたが獣王国ですか?それともノタルム国でしょうか?」


「気になる様だが、どちらでも無い」

「でも他に大陸って・・・」

「まぁ、君たちが知らない大陸だから君たちに影響は無いはずだよ」


「未知の大陸ですかぁぁぁ‼︎」

何故かベルダーの目が輝いている。

「ベルダー。我らの関与しない場所の事だ。お前が行けるはずは無いぞ」


「でもぉ・・・じゃディバル様は何故仮面を付けているのですか?そのままで見えるのですか?」


父親に冒険は禁止と言われ、ディバルの第一印象を口にしたベルダーだ。


「勿論だ、見えないと困るしな」

「お顔は拝見できないのですか?」

「普通の顔だぞ?」

「是非拝見したいです」

「ベルダー」

そこには睨みつける父親がいた。


「理由無く仮面を付ける訳無いだろ」

「はーい」

「ベルダーは面白い顔を隠していると思ったのか?それとも醜い顔を期待していたか?」

「いいえ、お祖父様に似てらっしゃるのかと思いまして」

「ああ、大司教マルソか」

「お祖父様をご存知ですの?」

「会ったことは無いけどな」

「雰囲気が何処と無く似てらっしゃるので、つい・・・」

「似てはいないと思うけどなぁ、俺はエルフでも無いし」

「ええ、てっきりエルフだと思ってましたのにぃ」

「似てるけど違うぞ」

「あのぉ、施術は一度の見学だけで宜しいのですか?」

「出来ればいろんな被験体を見てみたいが、君の父上に迷惑も掛けられないしな。後は自分で練習してみようと思っている」

「そんな、迷惑だなんて思ってませんわ。ねぇお父様?」

「うん?う〜ん、そうだなぁ」

「まったく迷惑だと思ってない様ですし、むしろしばらく研修した方が良いと思いますわ」

「こら、勝手に進めるな」

何故かベルダーはディバルに興味深々の様だ。


「ベルダーの申し出は有難いが父上と相談して決めるとしよう。なっ!」

「えっ、そ、そうだな。また連絡する」

「絶対ですよお父様。ディバル様も何度も研修しないと上達しませんから」

「ありがとうベルダー。また連絡する」

「待ってますからねー」



慌ただしくディバルと父が出て行った後、即座に母に連絡する娘だ。


"お母様、お父様がご友人と別の大陸で何か如何わしい事を考えているみたいですがご存知ですか?問いただしたら何と、ラソン様に聞けって言われました"


娘からのエマスコ(手紙を送る通信魔導具)で夫の企みを知り、激怒するも親愛なる神の使徒であるラソンに確認するこの国の王妃だ。


しかし、今回の件は不問にせよとの命を受け、理解したが納得出来ない妻は、夜通し夫を責めて愛欲の鬱憤をはらすのだった。






ヤツはいつまで経っても性奴隷のままらしい。

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