Alius fabula Pars 11 服装検査
五人が装備している姿を見定めるメルヴィ。
「・・・特に変わった所は無いかと思いますが・・・」
「本当かぁ?」
「は、はい・・・」
封印のメルヴィは下界の記憶は持っているが、冒険者の衣装や装備など知りもしなかった。
ディバル的には何かしら助言して欲しかったのだ。
改めて五人で意見を交わしていると・・・
「も、申し訳ありません。わたくしは余り冒険者と関りが無く装備までの知識は持ち合わせていません」
「・・・そうか。すまなかった。てっきり知っている物だと思ってたからさ」
(確かに・・・このメルヴィは外に出た経験が無さすぎるなぁ)
「では誰か冒険者の装備に詳しい者はいないかな? もしかしてエルヴィーノの方が知ってるか?」
「・・・はい。ですが龍人の方が、冒険者の知識が多いと思います」
「じゃ誰に聞けば良いかな?」
「・・・」
メルヴィは考えた。
本来ならば眷属であるフィドキアに命じれば済む事だ。
しかしフィドキアは対極で判断しがちな考え方で、個人の細かな装備には興味を示さない事を知っている。そうなると・・・
「バレンティアが良いかと存じます」
「どうして?」
「アレは大地の生命に希望を与える存在の眷属です。冒険者との交流も他の龍人達よりも多いかと思われますので」
「そうか。じゃ呼んでくれるか?」
「お待ちください。貴方様にお目通りさせるにはスペロから命じた方が良いと存じます」
(めんどくせぇなぁ・・・)
「解った。スペロを呼んで説明してくれ」
「畏まりました」
すると封印のメルヴィに呼ばれたスペロからバレンティアが呼び出された。
一通り説明を受けてディバルが問いただした。
「どうだ、バレンティア。俺たちの姿は普通の冒険者に見えるか?」
即座に跪き頭を垂れて発言した。
「はい、ごく普通の冒険者と変わりないと存じます」
「本当かぁ? こんなデッカイ熊が居てもかぁ?」
「・・・確かに一般的な熊の獣人よりは大きく毛色も珍しいようですが、希少個体の獣人もそれなりに存在しますので、多少人目を
「そうか。良かったなウルサ」
「はっ」
「では装備はどうだ?」
「はい、外套を着こんでいれば問題有りません。装備品も・・・変わった装備も存在しますから。しかし、宝飾品や金銀を加工したものは使わない方が無難です」
「なるほど。狙われるからか」
「はい、おっしゃる通りです」
「よし、もう一度俺たちで検討しよう。バレンティアも一緒に頼むな」
「は、仰せのままに」
問題だったのはディバルの装備だ。
これはスプレムスの要望が多かったからだ。
どう見てもお宝的な剣を持たせようとしたり、服も派手な色あいだ。
根本的に目立たない黒、もしくは茶色を基調として装備品の色を魔法で変えていった。
そして仮面だ。
白金に金の細工が施されている。
そして魔法も付与されている。
はっきり言ってお宝だ。
スプレムスが何と言おうが色を変える事にした。
変身の魔法を使い木目にした。
想像したのは檜の木目だ
本来の装飾模様も浮き彫りの様になっている。
肌触りも木片そのものだ。
そして再度装備してみる。
「素晴らしいです」
「全くだ。誰も我らがアルジとは思うまい」
「どう見ても普通の冒険者です」
「・・・」
全員が褒め称える中でメルヴィだけは無言でほほ笑んでいた。
何故なら目隠しをした冒険者など存在しないからだ。
それだけはメルヴィにも分かったが、口出しできる状況では無かった。
スクリーバは衣服だけで鎧などは装備していない。
従者の様な衣装で手袋をして帯剣している。
衣服の色は元から黒だ。
剣の性能はそのままで、地味な見た目に変更した。
ウルサは軽装備だ。
本来、装備も必要ないほどの防御力を備えている。
装飾品を全て革製に変えて無難な見た目に変えた。
シニストラとデクストラはもともと黒装束だ。
一切変更は無かった。
マリンキファに至っては虫だ・・・
「どうだ、バレンティア?」
「はい。普通の冒険者です」
「そうか、そうか。これで下界に行けるな皆」
「我がアルジよ、下界のどちらに向かわれますか?」
「それだけどな、まずはエルヴィーノとメルヴィの国を見たいと思ってんだ」
「えええっっ!!!」
ディバルの予定を聞き、おもわず声が出てしまった封印のメルヴィだ。
「ディバルシス様、これから直ぐにでしょうか?」
「俺たちは構わないが、向こうはどうだ? 夜中だったら朝に合わせて行くけど」
「お、お待ちください。確認いたします」
「我がアルジよ。大神様からお預かりした物をお渡しいたします」
ディバル達の為にスプレムスが用意したのは認識票だった。
ディバル用の認識票。
在りし者。
グラドス100。
全ての認識表の素材が組み込まれて虹の様な断層になった物だ。
表面は白で模様が施されており、”ディバル”と刻印されていた。
所持者には無限に魔素が供給される。
従者たちに用意された認識票。
スクリーバとウルサはグラドス50で白い認識表だ。
シニストラとデクストラは一般の冒険者としグラドス30で金色の認識表だ。
下界での冒険者ギルドで出回っている認識票作成装置は龍国製である。
理由は下界の生態を管理する為で、ギルドに置く装置から龍国に定期的に情報が送られる。
強さも進化の一つと考えて、個人情報から強者が発生する分布の資料にするためだ。
初期の装置は簡単な作りで等級も三つしか無かったが、最新の装置は見た目の装飾も豪華になり、重量も増して簡単には持ち運び出来なくなっている。
使用方法は手をかざすだけで全ての情報が読み取れるが、悪用される場合があったので血液認証が最新となっている。
ディバルの為にギルドで使用できる”旅人”を新しく新設し、素材の買取りが可能で身分証の役割を示す物として交付する事となった。
またギルドの依頼は受ける事が出来ないが依頼を出す事も可能だ。
旅人の認識票は年数に応じた高額な料金で購入する物となり、継続するには更新料を取られる。
不正防止の為、冒険者の認識票と同じく血液を媒体とする付与魔法で本人以外が手に持つと”赤く”なる。
したがって、ディバルとスクリーバにウルサは旅人でシニストラとデクストラは護衛依頼した冒険者か、別行動をとる形だ。
当然ながら旅人の情報は偽装してある。
☆
旅人の認識票は白だって。
さぁ下界降臨か。
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