Alius fabula Pars 8 装備と転生者狩り

ディバルは下界を散歩するために装備する武具と服をスプレムスに依頼した。


【武器と防具】

主要武器、六角棒。

魔法で様々な鉱石を超高温圧縮されて鉄の様に黒く見える棒は長さ150cmで直径わずか3.5cmながら重量2トンもあり、使用者契約の付与に基づき装備すると重力操作魔法が発動して、装備者には500g程度しか感じられない。

表面には等間隔で微妙な凹凸が有るので、わずかな角度で縦方向の剣戟を受ける事が可能だ。

攻防をこなす為に先端が尖っていて自動防御機能と言う魔法も付与されており、手放しで外敵の攻撃を対処出来る。

と言うよりも、2トンの棒に叩かれる奴らは悲惨だろう。

まず、武器や盾は役に立たない。

武器や盾と一緒に体もへし折られて吹き飛ばされるからだ。

魔物も同様で、ディバルの身体能力は人魔のソレとは別物だ。

しかも、魔法使いが使う発動体の変わりも出来る優れ物だ。


そして重要な付与魔法。

それは魔法剣防御だ。

一般の金属はどんな剣であれ魔法剣に弱い。

耐性が無いと剣や盾自体が切られてしまう。

魔法金属で作られた剣よりも魔法剣の方が攻撃力の数値は上だ。

但し、どちらも剣と魔法の技術で強度は左右する。



装備に弱体化効果。

防具は下界では軽装備とされる手甲、肩から胸を保護する防具、指輪に手袋、腰当て、膝下の防具に長靴だ。

ただし、いにしえの龍が老衰したのちの皮を使用した防具一式だ。

その龍の皮をなめして作った頭巾付き外套は黒色だ。

これらは素材本来の防汚、防水特性に物理防御に様々な魔法防御が付与されているが、全ての防具には重力操作魔法が付与されており、見た目と違いかなり重い。

全て身体能力を”低下させる”付与魔法だ。

そうしなければ下界の者達と触れ合う事が出来ないからだ。

もっとも、その分長靴の底だけは反対に重力操作魔法で総重量を軽減させて、足が沈みこまない様に考慮してある。

したがって長靴は一般的冒険者の重さで跡を大地に残す。



仮面。

眼と額を覆うように仮面を用意された。

スプレムスから”創造神の御尊顔を下界に見せるのは断固反対です”と言われたからだ。

話し合いの末に承諾を取った方法が仮面だった。

最初は全面だったが、美味しい者が食べられないと、文句を言って出来たのが鼻先から額まで隠す仮面だ。

その額の中央には細かな細工が施されている白金の仮面を装着する。

しかも両目の部分は視界が塞がれており見えないのだ。

だが全知覚魔法ゼンチを使う事で視界以上の情報を入手する事が出来る。

視界を隠すのは目視にとらわれず敵対者の様々な攻撃や擬装をゼンチで見破る為だが、”誘惑”を遮断する事がスプレムスの目的だった。



予備武器、神剣。

ちょっと剣の創造してみた。

六角棒と同じく数種類の鉱物を積み重ね魔法を使った。

2列に並んだ鉱物の柱は魔法で白赤に熱せられ押し潰されて薄くなる。

細長くなるように折り畳み、加熱、圧縮、急冷を繰り返す。

仕上げは刃先の超高熱圧縮だ。

これは、研ぐ効果以上の均一さで精密な刃先を作り出した。


二振り作ったが、どちらも幅広の片刃で反り返っている。

内部結晶作用で刀身には幾重にも波紋が写っていた。

方や黒い刀身で銀の波紋だ。

方や銀の刀身で黒の波紋だ。

これは異なる金属を積層鍛造たんぞうして模様を浮かび上がらせたからだ。


仕上げは魔法付与だ。

契約者登録、刀身強化、自動刃こぼれ補修機能に属性付与だ。

黒い刀身には暗黒魔法付与。

銀の刀身には神聖魔法付与。

どちらも同じ強さで違うのは属性だけだ。


自作の剣を眺めていると、スプレムスに神剣だと騒がれた挙句に自分用も作ってくれと、せがまれて短刀を作った。



予備武器、ハリセン。

指輪の魔導具で出し入れ出来るシツケ用魔導具。

叩けば大袈裟な音を出すが、攻撃力は無い。

叩かれると素直さが上昇し、言う事を聞く様になる効果が有る。

周囲は驚くが、慣れてくると痛そうな演技をして同情を誘うのだ。





【転生者狩り】

ディバルは転生者狩りの準備として予備知識を確認した。

スプレムスに召喚された転生者の四桁を処理するのにかなりの時間を必要かと思われたが杞憂に終わった。

何故ならばこの世界では人族の平均寿命は45歳なのだ。

もっとも倍以上生きる者も居るが極少数だ。


しかし、既に死んでいる者が大半だ。

ある者は運悪く直ぐに。

ある者は魔物に殺されて。

ある者は同族に殺されて。

そして現在も生きている者たちが200人ほどで少数を残して殺す予定だ。

勿論理由は有る。

曖昧な記憶だが、現世での器が死ぬ事で魂が元の世界に戻れると”設定した”記憶があったからだ。

実際は解らないが躊躇する必要はないと考えた。


転生者は所轄の妖精王が管理しているらしく、ディバルは紙に書いて表にしてあった物をもらった。

その表には転生前の日付に氏名、年齢、性別、出生地に、与えた付与と属性に転生させた種族が記されていた。


気になったのが転生前の日付だ。

ほぼ1900年から2100年の200年の間に絞られている事だ。

ヨーロッパからアジア大陸全般だが極東が多い。

何故その年代と地域に集中しているならのかは分からないが全員を処理する事には変わらない。



召喚日を遡り100年以上前に召喚されて人族に転生した名簿は斜線を引いた。

子孫が存在する可能性はあるが、行動目的は転生者の処理だ。


古い召喚で生き残っている可能性があるのは長命種に転生した者達だ。

これは少数なので簡単に処理出来る。


そんな訳で、9割が人族の転生を希望し、その8割が既に年齢的に死亡している可能性が高い。

何故なら、平均寿命が示すように様々な要因で若くして死亡する事も多いからだ。

全て確認する予定だが、生き残っている可能性は全体の1割以下だろう。

人族以外に転生した者も半数生き残って居れば良い方だろう。

人気があった種族を中心に調べて、生き残りの確認を行った。


そして最終審査だ。

これはディバルの独断と偏見で生き残らせる者を選考するのだ。

1、能力があり眷属として使える者。

2、前世の食べ物が恋しくて、現世での再現に取り組み情熱を注いでいる者。


2に関してはかなり食い意地の張った者が居る様で、世界中に分布している。

圧倒的に人族が多いが魔物の中にも存在した。


1に関しては面白い状況の者たちを発見した。

それは魔王と勇者達だ。

典型的な展開だが、どちらの陣営にも二人づつ転生者が紛れ込んでいたのだ。

現状はまだ戦ってはいないが、時間の問題だろう。


そして一覧に表記された名前を見ながら面白いくわだてを思いつく。

(こいつらを使って・・・くくくっ面白いかも・・・)







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