第8話 精霊王と指令

種族変換した後で自らをカンランすると、それぞれの名称が変わっていた。


「「「・・・」」」

「私・・・魔女になったの?」

「聖と魔、二つの属性を取得した女性です。これは相反する属性を持った高位の存在です」

スクリーバから丁寧な説明が有った。

「えっ私・・・天女? 聖なる魔法が使えるって事かしら・・・」

「その通りです。しかし二人とも多少の訓練は必要でしょう。魔人王と聖魔王も同様ですよ」


四人は自分の地位や身分と健康状態に特殊技能を観覧する事に意識が集中していた。

四人が凝視したのは、種族名と力量が数値化されている事と、〇〇〇の眷属と表記されていたからだ。

今の数値が進化前と比べてどの位上昇したかは元を知らないので分からなかったが、文字化けしているのは何かしらの条件が有って今は見れない、もしくは”見せられない”事だと理解した四人だった。


「あと自分よりも能力の高い相手のカンランは一部しか見れないので注意する様に」

「それはスクリーバ殿を見ても構わないでしょうか?」

「私めであればどうぞ。ただし、我らがアルジ様のカンランは不敬に当たるので無断で見る者が居たら即座に死を与えるので心せよ」

スクリーバから威圧の込められた注意喚起があった。


「そして、我らが主人の御名はディバル様とおっしゃいますが、お前たちは私めと同様に”アルジ様”とお呼びする様に。それ以外の呼び方は禁止します。従わない場合は死をもって謝罪させましょうかね」


四人がスクリーバをカンランすると・・・

南の精霊王の憑依体メリディ・スクリーバと出た。

「「「精霊王ぉぉぉっ!!!」」」

そして自分たちと同様に〇〇〇の眷属と表記されていたのだ。

他の項目は全て見えなかった。


「まさかスクリーバ殿が精霊王とは・・・」

「って事は、アルジ様は更に上位の存在?」

「あぅぅっ!」

魔人王バーネッティも驚き、身震いするバリオラだった。

「信じられないわ。帝国の魔導書に書いてあったもの。精霊王の記述が載ってたのよ」


「いかにも私めは精霊王で、この憑依体は我がアルジ様から特別に下賜かしされた魔導機械の逸品である」

そのように告げたのはスクリーバも自慢したかったのだ。

特別の憑依体を。

するとジリジリとスクリーバの顔を凝視しながら詰め寄る四人が居た。


(てっきり高位のエルフだと思っていたのに・・・)

(これが生き物でなく魔導機械だなんて、凄すぎるわ)

(どう見ても本物だけど作り物なの? これがぁ!)

(凄い。僕たちの世界とは違う技術らしいなぁ)


「くくくっ、プッ。あっはははははっ」

スクリーバが堪えきれずに笑い出した。

「いやすまない。お前たちの表情が動物の”それ”と同じだったからおかしくておかしくて・・・プッ」

頭では理解していても、近くで見て触りたい好奇心で一杯の四人の仕草が動物と酷似していたらしくスクリーバは大笑いしていた。


平静を取り戻したスクリーバが宣言した。

「では第一段階として指令を出す」

その指令、第一段階はスクリーバから四人への指導だ。

第二段階は魔法を再確認し、いくつかの魔法を賜る事になる。

第三段階が本格的な指令で二組に分かれての行動となる。

第四段階は行動の結果を出す目標がある。

第五段階は更なる面白い指令が待機している。



「しかしながら、第一段階は少しだけこの場での説明として、先に第三段階を説明しましょうか」

“予定通り”にスクリーバが進め、ディバルが説明する。


「魔人王ティマイオス・コクシエラ・バーネッティは魔天女ゾフィ・ロドコッカスと共に、フォルティス帝国に乗り込み新たな皇帝となって国を治めよ。補佐にはスクリーバを付ける」

「・・・拝命いたしました」

「拝命したしました」

驚いたが即座に礼をとり受諾する二人だ。


「次に聖魔王クリティアス・ラネウス・オドリバクターは聖魔女バリオラ・オルソポックスと共にケレプスクルム魔王国の新たな魔王となって国を治めよ。補佐にはウルサを付ける」

「・・・拝命いたしました」

「ちょ、ちょっとぉ・・・拝命いたしました」


四人とも内心は困惑しているが、驚くべき内容が多すぎて返事する事で精一杯だった。


「アルジ様、ウルサと言うのは・・・」

「ウルサは私めと同等の存在である。しかし、接近戦闘力と防御力は私めを遥かに凌ぐ性能を与えられておる。お前たちの補佐として、力で決する魔物達には絶対の強者である」

スクリーバの説明だが当事者は居ない。

「我がアルジよ、ウルサを呼び出して頂けますでしょうか」

すると左手を誰も居ない場所にかざしたディバル。



そこに大きな魔法陣が現れて、中心には巨大な男が顕現した。

するとディバルの横に跪き礼を取る。

「お呼びでしょうか、我がアルジよ」

「あぁウルサ。ようやく始まった所だよ」

「それは喜ばしい限りです。して、我の役目はどこぞの大軍を滅ぼしましょうか?」

「ん~大軍ではない」

「ではどこぞの魔物か蛮族でしょうか?」

「まぁ滅ぼしはしないがお前の力を貸したい奴らがいる訳だ」

「は、ご命令とあらば・・・」


召喚されたウルサはその場に居る誰よりも大きかった。

身長はかるく2mを超え、全身が体毛で覆われて銀色の毛並みは熊に似た獣人なのだ。

軽装だが魔導鎧を装着し武骨な風貌は野獣その物の様だった。


「あのぉ、初めまして、新しくアルジ様の眷属となったクリティアス・ラネウス・オドリバクターです」

「ちょっと自分だけずるいわ。初めまして、私もアルジ様の眷属となったバリオラ・オルソポックスと申します」

「アルジ殿の眷属となったティマイオス・コクシエラ・バーネッティと申す」

「アルジ様の眷属となったゾフィ・ロドコッカスと申します。お見知りおきくださいませ」


「ふむ。其方たちの事は事前に我がアルジから聞き及んでおる。して、我が力を貸し与えるのはどちらの組か?」


(こうなる事は想定済みなのか・・・)

「僕とバリオラの組でございます」

「そうか。では我をカンランせよ。我も其方たちをカンランしよう」

「は、はい。バリオラ」


うなづいて二人でウルサを観覧した。すると

北の精霊王の憑依体セプタン・ウルサと表記されていた。


「「北の精霊王ぉぉぉっ!!!」」

「その通り。我は北、スクリーバは南の精霊王である」


「どうしよう勇者様ぁ、精霊王が二人もよぉ!! アルジ様って・・・」

「偉大なお方だよバリオラ」

「そうよね。精霊王を二人も配下にされるなんて凄すぎよ!!」


バリオラの知識は帝国の図書館にある蔵書から得たものだ。

精霊とは実体が無く、魔素と自然界の力を使い様々な事象を起こす存在で、意思疎通が出来るのは特殊な能力を持った限られた者。と記載されていた。

更に、精霊たちの王は万物の長なりと。

人族との接点は無く、過去に精霊との会話でその存在が口伝で伝わると言う物だ。



「しっかし、長い名前だよなぁ・・・なんか略せないか?」

「「「???」」」

「男どもだ」

「ワシかっ!?」

「僕の名前ぇっ!?」


(・・・簡素化すっか。バネ、ティマ、テコバ、コク・・・オドリ、オド、バク、ティア)

「なぁ、オスコにアスラはどうだ?」

「どちらがどの敬称でしょうか、我がアルジよ」

「オスコが魔人王で、アスラが聖魔王だ」

「畏まりました。女性たちは如何致しましょう」

「そのままで良くないか?」

「畏まりました。両名とも良いか、これより眷属間では魔人王ティマイオス・コクシエラ・バーネッティをオスコと呼び、聖魔王クリティアス・ラネウス・オドリバクターをアスラと呼称する」


「オスコォ・・・漢字で例えるならば”押忍皇”とでも当てはめるか。悪くはない・・・」

「ええっアスラって阿修羅の事かぁ?・・・カッコ良いかも」

どうやら二人も納得したようだった。



「さぁ、あだ名も決まったし、とりあえず”テトラ”に戻るか。向こうで第一段階と第二段階を頼む」

「畏まりました。ではアルジ様の屋敷に戻りましょうか」

「小さな家だが暫くは滞在してもらうからな」


そう言ってスクリーバは全員が入る大きな魔法陣を展開した。







向かうのはディバルの棲家すみかだよ。

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