第2話
「ごめんね。君がパーティーにいると仲間を危険にさらすことになってしまうから……。申し訳ないけれど君をこのまま仲間として置いておくわけにはいかない」
私にそう告げているリンクさんの顔は心底申し訳なさそうだった。
「私もさすがに何度も皆さんを危険な目に合わせてしまったこと、申し訳なく思っていましたから。しょうがないですよ。それに、こんなこと初めてじゃないですから!」
私はその申し訳なさそうな顔を見るのが嫌で、明るくそう言う。
別に、リンクさんが悪いわけじゃない。私のスキルがこんなのだからいけないんだ。
「君の能力を活かせないリーダーで本当にすまない。君のそのユニークスキルを活かせる仲間が見つかることを祈っている」
リンクさんのその優しい言葉だけで十分だ。本当に私なんかのことを考えてくれている。ありがたい。
だけど、うーん。私はもういいかなぁ。パーティー組むと必ずこんな顔させちゃうんだよね。本当に申し訳ない。
その後、私がパーティーメンバー用に与えられた部屋を引き払うための準備をしていると、他のパーティーメンバーたちが代わる代わる励ましてくれる。
「俺たちでは、お前の能力を活かせなかったけど、お前の力は本物だからな。必ず誰か見つけてくれるさ」
「私たちの魔力が強すぎたせいでユイには迷惑をかけたと思ってるの。もし、私たち全員の魔力がゼロだったら、もっとあなたの活躍する場所を用意してあげられたのに」
「大丈夫だって。きっと魔力が物凄く少ない人だっているから!」
そんなことを言って励ましてくれるけど、魔力がゼロでわざわざ冒険者を目指すような人がいるとは思えない。
みんないい人たちだから、私が別れを辛く思わないように励ましてくれているんだと思う。だけど、その一言一言が、お前とパーティーを組める奴なんていないと言っているようで余計に辛い。
まぁ、だけどこの経験ももう3回目、もう慣れた。
「い、今までありがとうございました!大丈夫ですよ。私はそのうち最強だって世界中に知れ渡ってやりますから!その時を楽しみに待っててください!」
みんなに別れを告げると私はその足でギルドに向かう。
もう、さすがに3回目ともなると、こうなったときに何をすればいいかは分かってる。
大丈夫大丈夫。ヒカリさんだったら、また私にちょうどいい仕事を紹介してくれるだろうしね。
あぁ、だけど、リンクさんを紹介してくれたのもヒカリさんだったし、ちゃんと謝らなきゃな……。
ギルドの扉を勢いよく開くと、受付にいるヒカリさんと目が合う。
ん?新人さんに何か話してるのかな?まぁいいか。
「ヒカリさーん。ごめんなさい……またクビになっちゃいました。せっかく、リンクさんを紹介してくれたのに……」
私がそう言うのをみてヒカリさんが残念そうな顔をしてくる。
「そう……。リーダーで高い防御力のあるリンクくんの率いるパーティーなら、ユイちゃんでもうまくいくと思ったんだけどね……」
あ、すごく悲しい顔してる。
もっと明るく振舞った方がよかったかな?本当に私はもう気にしてないのに。
「そんな悲しそうな顔しないでくださいよー!私はもう慣れましたから!」
「そういうけどね、ユイちゃんは強いんだから、そのスキルと力が生かせるようになってほしくって……」
「ははは。みんなにも言われましたよ。魔力がゼロの人とだったらうまくできるかもしれないのにって!」
「……そんな冒険者いるわけないじゃない。酷いこと言うのね。まったく」
ヒカリさんは怒ってるみたい。そんなに怒らなくてもいいのに。
私のせいでリンクさんのパーティーメンバーに迷惑がかからないといいんだけど……。
「あー、私は気にしてませんから。本当にリンクさんのパーティーは今までの2回と比べたらいい人たちばっかりでしたよ」
本当にそうだ。前々回は一回迷惑をかけてからはほとんど雑用扱い。前回なんか一回スキルを使ったらすぐに追い出された。
こんな私を1月も面倒見てくれた時点でリンクさんたちには感謝の気持ちしかない。
「ユイちゃんがそう言うならそれでいいけど……」
「それで、今回も今までと同じように他の人の邪魔にならないような依頼教えてもらえます?」
パーティーから抜けると収入がなくなる。収入がなくなると生きてはいけない。
住む場所も確保しなきゃいけないし、仕事は大事だ。
だけど、私は私自身のユニークスキルの都合上、どんな依頼でも大丈夫というわけではない。
「うーん。ユイちゃんだったら、いつものように討伐系でいいかな?」
「はい。もちろんです!私のスキルが魔獣との戦闘でしか役に立たないのはヒカリさんもよく知ってるでしょ?」
私のユニークスキル『
対処法が分かっていればなんとかならないこともないんだけど、知らない人と会うような依頼は私には絶対に達成できない。
「そうね……今紹介できるのだと、この辺かな」
ヒカリさんはそう言っていくつかの依頼書を見せてくれる。まぁ、この中から選べばいいかな。
「けどね、本当にもったいないと思うの。ユイちゃん以上に力のある人を私は知らないし、その能力を最大限活かせる人が見つかればいいんだけど……」
「だから、そんなに気にしないでくださいよ。別にヒカリさんのせいってわけじゃないんですから。それに、私、もうパーティーはいいかなって思ってるんですよね。私のスキルだったら、ソロでもそれなりにやっていけると思いません?」
「それはそうかもしれないけど、そうなるとあまり大規模な依頼は受けられないじゃない。それでユイちゃんの目標を達成できるようになるとは……」
それを言われると辛い。私の目標は新聞に載るようなすごい冒険者になることだ。今、この街を拠点にして有名になってきている勇者ショウのように、この街の闘技場で長年一位に君臨しているパーティーのリーダー、ジョーのように。
「それはそうですけど……。絶対に不可能ってわけじゃないでしょう?」
「まぁ、ユイちゃんがそれでいいっていうんならいいんだけどね……。けど、そうだ。あの人なら……だけど、あの人は勇者パーティーの……」
ヒカリさんはまだ私のパーティーのことを考えてるようだけど、ん?今勇者パーティーって言ってた?
まぁいいか。気にしないで依頼を決めようっと。うーん、これにしようかな?これなら見通しのいい場所で戦えそうだし、人が来たら分かるだろう。
「これでお願いします!」
「えーっと、
「ははは。面倒おかけします……。依頼達成したらすぐ報告にくるんで、待っててください!あ、そうだ。部屋の確保もお願いしますね」
「ええ。了解しました。だけどねー。本当はユイちゃんにはパーティーを……」
「あー、もう分かりましたってヒカリさんの気持ちは十分受け取りました。でも、とりあえずソロでやらせてくださいよ!」
ヒカリさん、いい人なんだけどちょっとおせっかいなんだよね。私のことを考えてくれてるのは分かるんだけどさ。
そんなだから、私がソロで倒せるレベルの魔物の中では、報酬が高めに設定されている。
いちいちそんなに高額な護衛とか馬とか使えない。そのため、その街道を利用する商人たちが共同で依頼してくれる。
いやー、こんないい稼ぎの依頼があるときにクビになってよかった!
そう思って私が街の門に向かっているところで、勇者ショウのパーティーの家の前を通りかかる。
やっぱりすごいよなぁ。こんな家に私も住めるようになりたいな。まぁ、ソロでやるしかない私には無理だろうけど。
「ユニークスキル持ちで、勇者パーティーに誘われたときには、人生勝ち組確定だと思ったんだけどなぁ」
ん?なんか勇者パーティーの家の前でつぶやいてる男の人の声が聞こえた気がしたけど、気のせいかな?
あのパーティーだったら勝ち組確定なんだから、そんな、だと思ってたなんて言うわけないし。
まぁいいか。私にとって大切なのは今受けた依頼を達成することだ。
門で依頼書を見せると門番が扉を開けてくれる。
さて、久しぶりのソロ任務だ!
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