極振りユニークスキルは俺のユニークスキルで『調整』してやる パーティを追放されるようなダメスキルの俺たちだけど、全員そろえば負け知らず
roundra
第1話
「申し訳ないけれど、このパーティーでの君の役目は終わったと言わざるを得ない」
俺にそう告げたショウの顔は、少し笑ってるように見えた。
「……分かった。俺もうすうす感じてはいたよ。もう、うちのパーティーでは俺が一番弱くなってたからな……」
「いや、僕は君の今までの功績をよく分かってはいるんだ。しかし、他のメンバーがね……。それに、ここよりも上を目指すのに君がいては……」
口ではいいように話しているが、顔が笑いを隠せてないぞ。そう伝えようとしたが、もうどうでもいい。
そろそろ期限切れだってことを俺も感じてはいたから、仕方がない。
それから、俺が、パーティーメンバー用に借りている部屋で荷物をまとめていると、アカリがやってきた。
「あー、ようやく出ていくんだー。アンタの足りない能力補うためにホント私たちも苦労させられたわー」
「あぁ、そうだな。アカリもよく強くなったな。最初の頃からは……」
「あー、はいはい。別にアンタのおかげじゃないから、私は私のスキルのおかげで強くなったの」
アカリは俺を追い払うように手を振る。
確かにアカリの言う通りだ。俺の能力はこのパーティーの中で最も能力が低くなっていた。そして、そうなった俺は、俺のスキルでは単に足を引っ張るだけになるのも事実。俺は受け入れるしかなかった。
スキルというのは、生まれた瞬間に与えられるそれぞれの特殊能力みたいなものだ。
このスキルは生まれた瞬間に与えられるため、一生付き合っていくしかないのだが、その中には、一般スキルと呼ばれる普通の人が持っているようなものとは別のユニークスキルと呼ばれる特殊なものがある。
ユニークスキルは大抵が普通のスキルと比較すると優れたものだ。
だから、俺が生まれたときに鑑定された際、ユニークスキル持ちだと分かったとき、生まれた村では大騒ぎになった。
村が出来て以来、ユニークスキル持ちのものは大抵が冒険者になり、別のユニークスキル持ちの者たちとパーティーを作り、出世したということだった。
冒険者は、ダンジョン探索や魔物退治や武道大会荒らしなんかで高収入が期待できる。
ユニークスキル持ちの俺もゆくゆくは高収入冒険者の仲間入り……と思っていたんだ。
「ユニークスキル持ちで、勇者パーティーに誘われたときには、人生勝ち組確定だと思ったんだけどなぁ」
俺は部屋を後にすると思わずそう呟いていた。
勇者はレアスキルではあるものの、ユニークスキルではない。勇者のスキル持ちは現在知られているだけでも10人いる。その10人のうちの一人であるショウに俺はパーティーに誘われた。
勇者パーティーに入れるなんていうのは、冒険者としての成功が約束されたようなもの。俺は、即答で加入を決めた。
俺のスキル、『調整士』は勇者パーティーの中で輝ける。そう信じていた。
パーティーに加入した当初はよかった。
俺が加入した、そいつの勇者パーティーもまだ新人で、能力不足。俺は自分のスキルを認識してすぐに鍛え始めていたから、そこらの通常スキル持ちでは敵わないほどの能力を持っていたしそういう状況では、俺のスキルは有用だった。
だけど、そのうち、パーティーのみんなのレベルが上がって、俺の能力が一番下になると途端に使えないスキルになってしまったんだ……。
「はぁ。これからどうするかなぁ……。とりあえず、部屋借りるためにギルドにでも行くかなぁ」
冒険者ギルドに行けば、困ったことがあっても大抵のことは何とかなる。だから、旅立つときにはとりあえず冒険者登録をしておけというのがこの世界の常識だ。
とりあえず冒険者ギルドなら住む場所ぐらいは紹介してくれるだろうな……。
冒険者ギルドに到着すると俺はすぐに受付に向かった。
ここを拠点に活動していたから、受付の人は大体顔見知りだ。今日は……。あぁ、ちょうどいいや。ん?でも、新人に指導しているようにも見えるな……。
「すみません。ヒカルさん、今大丈夫ですか?」
「え?ああコウヘイさん。ちょっと待ってくださいね」
ヒカルは話していた新人に謝るような手ぶりを見せながら近づいてくる。
「あ、新人さんの指導中でしたか?」
「あ、いえいえ。お気になさらず。それで?今日はどういったご用件ですか?」
「あぁ……部屋を紹介してもらいたいのですが……」
「え?コウヘイさんがどうして?パーティーの住まいがあるでしょうに……もしかして……」
「そのもしかしてです。とりあえず、今夜一晩泊まれる宿でもいいので紹介してもらえません?」
「ふーん……私は別に構いませんが……しかし、もったいない。コウヘイさんはユニークスキル持ちですよね。しかも、パラメータ操作系の……」
「よく知ってますね。さすがはヒカルさんだ」
「勇者パーティーの情報は私たちにとって宝みたいなものですからね。コウヘイさんのスキルは『調整士』ですよね。仲間と一緒にいてこそ輝けるスキルなのに……」
仲間と一緒にいてこそというか、仲間と一緒にいないと役に立たないスキルだけどな。
まぁ、でもしょうがない。俺が弱いから追い出されたんだ。それこそ、アカリみたいな通常スキル持ちにすらけなされるぐらいに俺は弱い。
「まぁまぁ、その話はもういいですから。部屋と……なにか俺が一人でもできるような依頼はあります?」
「あぁ、じゃあ先に依頼を引き受けてくれます?その間に部屋はいくつか見繕っておきますから。討伐系、採集系、雑用系とコウヘイさんのランクなら一通り何でも紹介できますけど」
「え?ランクって、俺パーティーじゃなくなってもそのままのランクなんですか?」
俺は勇者パーティーに加入していたおかげでいつの間にかAランクになっていた。
Aランクは、最上位のSランクを除けば最高のランク。大抵の冒険者が目標にしているランクだ。
「ええ。冒険者のランクはパーティーにつけられるものではなく個人につけられるものですから。それで?どれにします?」
まぁ、Aランクだとはいっても、俺一人ではCランクぐらいがいいとこ。しかも、回復ができるわけでもないし、今の手持ちではたいした道具も買えない。となると、討伐系は厳しいだろうな……。
「じゃあ、採集系でお願いします」
「採集系ですね?少々お待ちください」
ヒカルさんが依頼書をいくつか確認してくれている。まぁ、彼女に任せておけば俺が達成できないようなものを紹介されることはないだろう。
しばらくすると、いくつかの依頼書を見比べていたヒカルさんの顔がいきなり輝くような笑顔になった。見つけてくれたのかな?
「じゃあ、これなんかいかがですか?少し街から遠いですけど、採集対象のものもコウヘイさんだったら探せますよね」
高級薬草の採集か。うーん、そこそこ探しづらい素材なんだけどそれだけいい収入にもなるし、まぁ、これでいいか。
「わかりました。じゃあ、これを引き受けます。とりあえずそのまま行ってくればいいんですよね?」
「ええ。手続きはこちらでしておくから、コウヘイさんはただ採集してきてくれれば大丈夫ですよ」
よーし、ソロになって初めての依頼だ。絶対成功させなきゃな。
ちょっと準備だけして、すぐに出かけようっと!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ヒカルはコウヘイが去っていく様子を見つめてため息をついた。
勇者ショウのパーティーの中でただ一人のユニークスキル持ちだったコウヘイの力を活かしきれなかったショウ。それをヒカルは感じながらも、ただのギルドの受付である彼女は何もすることができない。
それでも何かをしてあげたかった彼女は、少し策を張り巡らしたのだった。
(うまくいけばいいんだけど……)
そう思いながら彼女は新人・モモカの指導に戻る。
「さて、これは採集系の依頼の書いてある依頼書です。これを冒険者の方に紹介するときには注意しなければいけないことがあります。なんでしょうか」
ヒカルの言葉にモモカが答える。
「その他の依頼……特に討伐系の依頼のエリアと重なっていないかどうかを確認することですか?」
その言葉にヒカルは満足そうにうなずく。
「正解。さすがモモカちゃん。よく勉強してるね。採集系の依頼のエリア付近で討伐系の依頼がある場合、採集の最中に討伐対象の魔獣が現れたら危険だからね。そういう事態に陥ることがないように、採集任務と討伐任務を両方とも紹介するのがベストね」
そのヒカルの言葉にモモカは不思議そうな顔をする。
「あれ?でも、先輩。先ほど先輩が紹介されていた高級薬草の採集任務って……?」
「え?どうしたの?」
ヒカルはそのモモカの反応にいたずらっぽく笑う。
それから、ヒカルは高級薬草の依頼書の注意書きに目を向ける。
そこには、こう書かれていた。
『採集エリア付近で
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