第170話 1品どうぞ。

 亮介は昨夜なんやかんやとあまり寝てなかったのだが、2日連続の外泊をクミねぇにイジられるのは面倒なので家族の帰宅を待たずに家を出た。亮介の両親の教育方針は極めて緩く、放任主義といよりも放牧に近い。しかし子供たちは特にそれをありがたいと感じることはなかった。親の設定した範囲よりかなり内側でしか生息しない子供たちなので、これが自由かどうかわかってなかった。


 そして今回のは外泊も行き先だけハッキリしていれば注意されることもなかった。ただ姉の陽茉は(2日連続で別の女子の家に泊まるんだ)一度釘を刺さないと、そんなことを思ったが彼女の性格や口調だと亮介は注意されてることに気付かない、気付かないどころか『陽茉ちゃんにかまってもらっている』と喜ぶシスコン属性だった。


「亮ちゃん。私どうだった」昼下り、夕方に近い『ナッシュビル』ではないファミレスの片すみ。咲乃は母親にメールを送る。

『友達を泊めたい』

『友達? いいけど。女子?』

『違う男子。亮ちゃん』

『うそ!? ママ、初亮ちゃんなんですけど!! ご馳走作るから時間潰して帰ってきて!!』


 絵文字とスタンプだらけの母親の返事を見てスマホをしまう。ため息混じりなので『ダメって?』亮介はたずねる。当たり前だけど、娘の男友達を泊めるのはそれなりにハードルがある。

「違う。ノリノリなんで、ちょっと引いただけ。で、どうだった私」スルーしょうとしたが咲乃は同じ質問を繰り返した。お茶を濁すつもりはない。でも(場所柄とかあるだろ?)日曜の夕方のファミレス、家族連れやカップル、そして友達同士でわいわいやってるなかでする会話なのか。このあと咲乃の部屋に行くのだからいくらでも時間はある。


「想像してたより、なんかよかった。オレの想像ってこんな程度だったんだと自分の想像力にがっかりした」

「つまり?」

「言わせたいの? キレイだった。服着せるの後悔するくらい」

「へ―っ。そうなんだ。亮ちゃんってそんなこと言うんだ。それって褒めてくれてるのよね?」

「べた褒めですけど」その言葉と共に咲乃は席を亮介の隣に移した。亮介はこんなちょっとした女子の好意に弱い。移動してきた咲乃は小声で(胸とかどうだった、小さくないとは思うんだけど)そう言いながらイタズラぽく亮介の腕に胸を当てる。


(想像以上にデカかった)

(えっ亮ちゃん私の胸、想像とかしてたの? なんかえっちい。それって服の上から見て想像するの?)そう聞かれて亮介は困る。想像で無理やり押さえつけて脱がしてる、なんて言えない。しかしこの辺りは冷静さを取り戻した咲乃の方が数段上だ。

(へ―っ。私は亮ちゃんの想像の中でなんだ。これからもかわいがってあげてね)上目遣いで自分を『オカズ』にする事を推奨した。


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