第169話 ホラーなんですよ。

(なに、なんなの!? なにいい感じの顔してんのよ!!)咲乃はクッションで前を隠しながら心のなかで叫ぶ。確かに要求したのは咲乃自身だった。咲乃が『指使わないでイカせて』と要求し、亮介が答えたに過ぎない。


『ちょっとそこのスマホ取ってよ』『わかった』と、なんら変わらない。いや、変わるか。しかし少なくとも咲乃には決心みたいなものが足りてなかった。

(なにこの!! さっきまでと別物にじゃない)涼しげな亮介の視線がまた腹立つ。咲乃は思う(ヤバい。声出してない自信なんてミジンもないわ。出してたかなぁ? 出してたかもだけどそこまでじゃないよね?)


「咲乃。声デカイよ」

「!?」マジか!? そこまで出してたのか!? えっ、なに? 私『監禁キャラ』でドS設定の私がまさかの『ヘタれ族』の亮ちゃんのテクにヤラれたわけ!? ないわ……咲乃とってはまさに『興味半分』だった。


(口ならどんなのかな)経験してもいい年頃、とばかりに振ったのだが……振ったのは自分の頭だった(ダメだ。この男こんなテクどこで習得したんだ!? これちょっとした資格じゃないのってレベルだわ)咲乃はよくわからないことを考える。考えながら(か、身体の関係で離れられなくなるって都市伝説……これじゃないよね)咲乃はこめかみを押さえた(ヤラれた放しは趣味じゃない!! したことないけど、それは亮ちゃんも同じ。やってやれない訳がない)決意を元に咲乃は言葉を発する。


「亮ちゃん、来て。私もするから」その発言、亮介にとって嫌な予感しかしなかった。そしてそれはすぐに現実の厄災となり亮介の身に降りかかる。


『噛み!!』そんな勢いで咲乃は亮介のを噛んだ。わざとじゃないけど、亮介には予期出来た。半日前に京子にかじられていたのだから。しかし同じ噛むにしても勢いが違う『ガジガジ』とちょっと当たっちゃったの京子に対して、咲乃は『そこそこ噛みついちゃった』だ。しかし亮介も我慢する、まさか(京子はここまで噛まないけど?)とは言えない。言えるわけない。


 耐える男亮介はそこからしばらく頑張ってみたが、白旗をあげた。勘弁してくださいと。するとやる気満々の咲乃が目を丸くする。


「えっ、なんでよ」

「なんてじゃない。咲乃おまえさあ、噛みすぎ!! 終わるころになくなっちゃうだろ」マジ勘弁な亮介はさっさとパンツを履いてしまう。

「亮ちゃん、ちょっと待ってよ。ほら私、現役JKだよ? その現役JKがお口で、ほら」

「ほらじゃないよ、むしろホラーだよ! 現役JKかもしんないけどこんだけ痛みの伴う行為は無理だよ、無理!」と言いながらもちょっと咲乃が可愛そうになったのか亮介は助け舟を出す。


「今日部屋に泊まりに行くんだろ? その時動画見て研究しょうぜ」咲乃は『コクリ』と頷いた。






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