第171話 お父さんでもなく?
泊まるにしても、明日は学校だ。荷物とかどうする、制服や教科書は。そんなことを咲乃にたずねると『明日誰かに早めに送ってもらえばいいから』と今の着替えだけを手に家を出た。明日の朝は、というかしばらくは京子は迎えに来ない。ギブスが取れるまでお母さんが送ることになっていた。帰りだけお願い出来ないかと頼まれていた。
「急に行っていいのか」
「なんで? ママ喜んでたよ。お父さんは単身赴任だしアニはアニだし」そう言って隣で歩く咲乃は手を後で組み体を反らすストレッチをした。体を後ろに反らしてるのだから、胸が強調される。その胸をチラ見していることが咲乃にバレた。
「まだ、見足りないのかな」呆れちゃう、そんな言葉を付け足した。
「見飽きた方がいいんだな」
「物には限度があります! ご利用は計画的に」亮介は釘を刺された。咲乃は普段あまり人とは会話をしない。したとしてもいつもの面々とだけ。しかも割と『単語』だった。こんなにテンポよく話すのは亮介だけだ。京子もたまにあるにはあった。
「亮ちゃんさ」
「なに」
「アレ買う?」
「アレ? あれか」とりあえずふたりには通じたようなので補足説明は避けたい。
「アレないと流石に私困る」
「だよな」そう答えたものの、これって『最後まで』するって話だよな? 亮介は自問する。そう言えばさっきも『最後まで』いいと言っていた。
「恥ずかしいよな、買うの」
「恥ずかしさを乗り越えて私の初めて奪いに来いよ」
「ムリ。日曜のドラッグストアだよ、同級生とか居たらどうすんだよ、しかも女子!」
「じゃあ、今日のお泊り会お互いに『イカ』せ合う感じなのね」
「お互い? まず咲乃は動画見て研究な」
「あっ」咲乃は亮介の顔を見て立ち止まった。
などなど、いつもながら取るに足りない会話を交わしながらふたりは咲乃の家に着く。途中京順の家の前を横切ったが咲乃まったくスルーした。ふたりはいとこに当たるが親同士(姉妹)仲が悪いらしい。それはさて置き咲乃の家の扉を開くと待ち構えたように、
「いらっしゃい、あなたが噂の亮ちゃんね」若い女性にハグされそうな勢いで接近され亮介は焦る。
「はじめまして。えっと、お姉さん?」
「あらあら、なんて素直ないい子なの」
「亮ちゃん、よく見て目元とかほうれい線。ママよ、わかるでしょ普通」
「えっ、お母さん。お姉さんでもなく?」
「お父さんでもないわよ」咲乃はある程度覚悟していた『お約束』に軽くため息をつく(確かに若い。体型も……って私の服じゃない)咲乃の家の前ですったもんだしているとまた誰かあらわれた。
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