第160話 ハーレムモードはどうです?
「なにはともあれ……」パーカーだけ羽織ってうつ伏せでたまに足をバタつかせる京子のお尻を見ながら亮介は口を開く。
「なに?」
「そろそろ服着ないとだろ」
「あ、忘れてた」京子は自分の露わになった胸元を見て苦笑いする。時間はそろそろ朝に近い。早起きの雅が小一時間で起きないとも限らない。
「ふたりしてこの格好はまずいよね」京子は「この格好」のままそっと亮介の首に手を回す。耳もとでは「服着ちゃうけど?」思い残す事はないの、的な振りをする。そう言われると思い残すことだらけのような気がする亮介だった。離れかけた京子の体を引き寄せる。
「とりあえず、服だけは…ね?」と京子の大人の対応に促されてふたりは服を着る。春とはいえ明け方は肌寒い。肌寒いが我慢して部屋の空気を入れかえた。ふたりのニオイが残ってるかも知れない。冷えた室内、ふたりはコタツに足を入れて暖を取る。
「不思議ね」視線を宙に回せながら京子は呟く。言葉に主語がないものの亮介には京子の言葉の意味が理解出来た。きのうまでのことが嘘のように何もかもふたりを包む景色が変わってしまったかのようだ。
「ホント」亮介は少し間を置いて返事する。京子はコタツの中でいたずらに足を擦り付ける。まるで子猫が戯れているようだ。
「コーヒー。飲みますか」京子が首を傾けながらたずねる。その仕草が亮介には新妻風に感じられたちょっと照れた。
「それもいいけど……誰かがおきてからでいいよ」
「そう? ちなみになんで?」
「それはほら、ふたりでの時間はあと少しだろ」
「なるほどね。あの亮介さんがね、ふむふむ」わざとらしく納得した感じを出す。
「あのってなに?」
「去る者は追わずと申しましょうか、淡白と言いましょうか、真面目な亮介さんという意味ですよ。その亮介さんがですね、私とのふたりの時間が惜しいと言うんだなぁ、と」なんだか悟った感じで京子は頷くも(オレって真面目なの?)聞いてみると。
「大真面目でしょ? これだけまわりに気のある女子がいるのに二股とかないでしょ、思わない?」
「気のある女子?」
「あ―そこからか。なるほどね、じゃあさ望さんの時はどうなの、付き合い始めたときと距離を取ってる今。私と望さん重なってる? 付き合ってる時期」そう言われて亮介はある部分納得した。自分は器用ではない。同時で誰かと付き合うとか無理だと決めつけていた。それでも、もしそんなことしたら京子はどう感じるだろう。そんなことぼんやりと考えているところに京子は付け加える。
「リョウはさ、真面目過ぎるから小説でもハーレムモードが発展しないだよ」と。
実のところ京子の言うことは正しかった。なんで上手くハーレムモードが書けないのか悩んでもいた。その答えを京子が提示してくれたかのように亮介には思えた。
(もしかしてオレはチャレンジ精神に欠けていたのか)変な方向に反省する亮介だった。
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