　とは言うものの、このふたりが一足飛びに関係を発展させる訳もない。悩みや迷いがあるのでは無くその一歩で互いに満足した。互いの体に触れ、体温を感じ満たされた。

　まぁ、有り体に言えばＡからＢへと発展したわけだった。それより先は怖くて進まなかったというより、自分たちの現時点ではココと決めたかのようにそこより先にはまだ、進まなかった。

「リョウさぁ本当にないの？」京子は何やら疑いのジト目を向ける。

「この期に及んでそれ？」亮介は流石に呆れる。本気ではないのだが『本音トーク』ではあった。

「なんで疑うかな」正直心外ではあるものの聞いてみた。まったく身に覚えのない言い掛かりなのだが、甘えた声の京子が本気で疑ってるとは思ってなかった。実際に疑っているなら前をとめないで羽織ったパーカーに全裸姿でうつ伏せになり足をバタッかせるなんて無防備ではいない。

「うまかったとか？」

「ぶ―っ！　ぶ―っ！」京子は抗議の意味のブーイングを放つ。

「なんでよ？」

「何でって、日頃の観察の結果だ」

「観察ってなに」

「それは、アレだよ」

「あっ！　えっちい動画か」

「まぁ、そうなる」

「そうか、なら許す」京子はお尻がほぼ丸出しなのも気にしてない。言われぱなしなのも何なので亮介も言い返す事にした。

「そういうキョウはどうなんだ」

「わたし！？　わたくしの何を疑うのよ」京子は呆れてヤレヤレと手を広げる。

（何これオレは疑わしくて、自分は潔癖だという態度。一体どこからそんな自信が―）そう考えて亮介は思い当たった。

「あっ！」

「あっじゃねぇよ！　なんの『あっ』なの答えてみ？」

「いや、その京子さん『ガジガジ』だったな、と」それを聞いた京子は京子で内心『カチン』ときた。やり返さないと、女がすたるとばかりに声をはる。

「そうですよね、わたくし『ガジガジ』でしたよね、歯立てまくりでしたよね。次回までにしっかり練習しとかないと」意味深発言に亮介も『カチン』ときた。

「京子さ、どういう意味。どうやって練習するの、いつ練習するの、誰と練習するの？」ムキになる亮介を他所に京子は思った通りの反応に満足する。

「冗談です。まぁ、しいて言えば今練習しょうかと。ね？　どう？」ほんの少し関係が発展しただけだと思っていた亮介は京子の大人びた表情に焦る。そんなことお構いなしに骨折をものともさずに亮介の上に馬乗りになる。

「京子さん、いくらなんでも『ギシギシ』いわせすぎだろ」その言葉にきれいな舌を少し見せて京子はふざけた。

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