第154話 したたかさ。

(まずい。ホントに手札がない)京子は亮介の『望との関係』を聞き出す手札―つまり亮介の言う『等価』のネタを失っていた。


 高校女子が『ひとりエッチ事情』を明かしたあとにこれを超えるネタなんてない。あるわけない。京子はまさにムンクのように叫ぶ寸前まで来ていた。


 いや、無くはない。そう、無いなら。そう創造すればいいのだ、となった京子ではあるが。


(じゃあ何を創造するのか)になっていた。高校女子の『ひとりエッチ事情』を超えるもの…もうするしかないんじゃね? もう目の前でするしかないんじゃね? 


 京子は堪らず目が回った。そこまでして聞き出したいのか、自分! そんな自問自答が生じるも―(聞きたい!)だがしかし、流石に『ここまで』来てしまうとホントに嫁に貰ってもらわないと洒落にならないゾーン。黒歴史待ったなし!


「リョウ、あのね。私―望さんとのこと知りたい。だけど『等価』のネタが無くって。もしもだよ? もし私がナニかしてあげるとかが『等価』になるとしたら何かな」


 京子は逃げた『目の前でひとりエッチ』をするぐらいしか『ネタ』が残ってないのだが―もしかしてもっと難易度の低い要求が亮介から出されたら―


(それでよくね?)ズルさを覚えた京子だった(ズルじゃない、したたかなのよ。女は度胸、出たとこ勝負よ)


「じゃあ、キョウの『ひとりエッチ』の想像の内容の教えてよ」


 一瞬考えた京子だが(目の前でひとりエッチするしかないんじゃね?)と思ってたことからすると、めちゃくちゃ難易度が低く感じた。むしろいい人に亮介が思えた。愛さえも感じた。


 内容。つまりはシチュエーション。どんな設定なのかそこから説明が始まった(超ハズいんですけど! でも、まぁリョウもですから! 照れていても望さんとの関係わかんない! いざ進め!)


「まずは…家庭教師中に、そのテストをさせる訳です。リョウが雅に。そうしたら1時間部屋から出ない訳です雅は」

「なるほど、で?」

「えっと、私は部屋でスマホとか見てくつろいでる感じ。そのにリョウが入って来てそのいきなり脱がすの、スエットの下を」


 私は一体何を説明しているのだろう、京子は根本的な疑問にぶち当たった。これって女子的に終わりじゃね? そう思いながらもここまで来たら行ったれ! そんなギャンブラー的な発想が根底にあるのかも知れない。


「キョウ、今スエット脱いでるよな、1回履こうか」

「えっ履くの? いいけど別に。いいの、履いても」

「いいよ。すぐ脱がせるし―」

「そう? じゃあ」といいながら京子は亮介のキーワードを聞き流していた。

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