第146話 その話をしょう。

「京子、世の中な。素直だからって『許されること』と『許されないことがあるの』知ってる?」


 亮介は京子のパンツに『王手』を掛けたまま語る。


「それは知ってる―」


(知ってるけど、なに? 知ってたらパンツ脱がさないの? そんなことないよね)


 京子はこころの叫びを亮介に伝えたかったが、亮介には一向に届かない。


「だから―オレのを口先で誤魔化そうとしたよね?」


(確かにしたかもしれないが―私のは!? パンツほぼ脱がされかけてんですけど!)


「それでも―おまえの気持ちはわかるよ。1日履いて汗かいて、体育までしたパンツ恥ずかしいよな?」


「あっ、うん。そのリョウに嫌われたくないじゃん?」


 そんな『渡りに船』会話に京子は全力で『乗っかろう』とした。そして『ほっと』していた。亮介の言葉を聞くまでは。


「じゃあ。ブラならいいよね」


(あっ)


 京子は言葉を失った。もしかしてこれ作戦かも。京子は目の前にバンツのゴムに手をかけた『カレシ』を見る。


 もともと『ブラ』が目的なんじゃねえ? それをパンツでハードル上げて、妥協した風からの『ブラ』じゃね?


(ヤラれた! ヤラれてないけど!)


 ここで、突如京子は我にかえる。我にかえると見えてくるものがあった。目の前にいる亮介は口調こそ遊び半分に聞こえるが―


(何か寂しそうな目をしている―なんか、あったんだね)


 京子はそっと目を閉じた。急なことで慌てふためき我を失ったが。


(別に―嫌がる理由もないよね)


「リョウ、やっぱり今のナシで」


 亮介の手元が一瞬固まるのを京子は感じた。そしていつもの作り笑いを亮介はする。


 その作り笑いが京子の胸に、寂しそうな表情が京子の胸に刺さる。


「あ、うん。何か無理言って悪かったな―」


「違う―」


「―違う?」


「あのね、リョウも悪いんだからね。急にだよ? パンツ脱がされかけて焦って…でもちょっと冷静になった―」


「リョウのお好きにどうぞ。パンツでもブラでも、違うか。全部でもいいよ。誰か来ても私―」


「開き直るよ、なんで駄目なのって。この人にしか見せないって、言うよ、だから―」


「キョウ、泣いてるぞ」


「えっ、ウソ―」


 京子は亮介に指摘されるまで、頬を伝う涙に気が付かなかった。別に悲しくも、嫌でもないのに溢れる涙に京子は少し戸惑った。


 涙の理由を探してみた。


 答えは探すまでもなく京子は持っていて、それを見ないようにしていただけだった。


 ―苦しいんだ。


(私―苦しいんだ。只々苦しくて期待しないようにしていて、見ないようにしてきた)


 亮介の隣にいる大き過ぎる存在が、苦しい。


「リョウ、私―苦しい。リョウの隣に望さんが――その事を考えると苦しい」


「―キョウ、しょうか」


 京子は恐れながらも頷いていた。







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