第145話 京子焦る。
「リョウ! ちょっと、ちょっと待ってよ!」
ここ最近落ち着いた口調の京子が慌てていた。
ここは北町家の京子の部屋で、骨折して服の着替えがうまくできない京子を亮介が手伝う感じになっていた。
―のだが、京子は慌てふためき亮介に『待つように』頼んだ、懇願した。なぜなら―
亮介の手は今どこにあるかというと―京子の制服のスカートの中で、しかも両手とも―
腰の辺りでしっかりとパンツのゴムを掴んでいた。
掴まれた京子が現状把握困難にて『待った』を掛けた訳だ。
「なに?」
「なにって、なに? いや、むしろそれ私のセリフ。なんでいきなりパンツに指かけてるの?」
「 えっ、ちょっと待ってよ! ずらさないで! ゴムをパチンといわさないでよ!」
京子は焦りから生唾を飲んだ―音をたてて。
亮介の『暴挙』を止めようとするも―三角巾が邪魔してる。
「こ、こんなことしたら望さんに怒られるって、絶対!」
「そうかな、じゃあ試す?」
「試さない! なんでそんなこと試すためにパンツ剥がれなきゃなの?! 誰得よ!」
「えっ? オレ得」
平然と答える亮介に京子は焦りを感じた。
(おかしい、いつものリョウとなんか違う。取り扱い間違えなら―イッキにノーパンにされる!)
「リョウ、ごめん! なんか怒ってるよね? だからこんなことしてるんだよね? 着換え頼んだのダメだった? 誘ってる感じだった?」
「誘ってる感じも何も、誘ったでしょ? オレなんか、どうせなんにもしない、出来ないってキョウ思ってるだろ?」
京子は分析不可能なパンク寸前の状況の中――
(『何にもしない』と『何にも出来ない』の違いを考えた―考えてどう答えたら『被害』が少ないか計算したが―)
駄目だ! どう転んでもパンツは脱がされる! 不可避だよ!
そう京子の中で結論が出た。
出たものの、それでも女子なのだ。どうすれば被害が少なくなるか考えてひとつの答えを導き出した。
「リョウ―別にいいよ。パンツ脱がしても―でも今は嫌だから」
「今は?」
「そう、今は嫌よ。1日履いてきたパンツよ。しかも体育あったでしょ? いくらなんでも―いくらカレシだからって嫌なものはイヤ」
「じゃあ、いつならいいの?」
(うっ、やっぱりそう来るか―今日の亮ちゃん手強い)
「いいよ、そうね。お風呂の後ならいいよ。リョウはカレシなんでしょ? だったらいいよ」
京子は出来るだけ誠実に注意深く答えた。答えながら亮介の反応を伺った。
「キョウさ。もしかして―今乗り切ったら大丈夫とか思ってる? 思ってるよね。雅の家庭教師に来たときは雅がいるから大丈夫だって思ってたりする?」
相変わらず亮介の手はスカートの中でパンツをロックオン。
下手な言い訳は通じないかも―そう直感した京子は口を開く。
「うん、ごめん。少しはそう思ってた。雅いるしって…えへっ」
苦しまぎれに笑ってみせた。
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