第122話 テスト返し。

 教室に入るとオレを見かけた京子は『ささっ』と逃げた。


 避けられてるのか。今日のうちに話がしたい。


 今は時間ないから後にするか。


 京順けいじゅんは机で『きなこパン』を食べてる。朝練終わりで腹が減ってるんだ。


 そういや咲乃から『薬師寺とは私の話しないで』と注文があった。何でも親同士、まぁ姉妹同士みたいなんだけど仲悪いらしい。


 下手な情報が伝わると『小言』を言われるとか。色々あるな。


 京順はすれ違うオレに『ハイタッチ』を求めるが、お前の手。きな粉だらけな。やめとこ。バレたか的な顔だ、確信犯だな。


 詩音は進学クラスなので、違うクラスだ。今1番顔を合わせたくないかも。


 ちょっと距離を置こう。オレのハートは『お豆腐』なのだ。褒めて育てる心の余裕のない方には、ちょっと無理なヤツだよ、オレ。


 冗談はさて置き、ちょっと時間ある『カキコム』覗くか。咲乃とのコラボ企画はまだ、ネット上では具体的な進展はない。


 だけど、オレ個人の日々の更新は止まってない。反応が気になる。


 コメント増えてる…


 そんな気してた。全部、望ちゃん改め、望さんからだ。しっかりとした感想を書いてくれている。


 ありがたいけど…


 全話に書く気だろうか。面倒くさくならないといいけど…そうだ。返信してみよう。お礼しないと、コメントの。


 身元がバレないように、はじめましてとか書くか。


 コメントへの感謝とうれしい気持ち、応援が心強いです、みたいなことを書く。


 書きながら顔がニヤけてないか気になった。ここは教室だし、スマホ片手にニヤけるのは痛い。


 すべてのコメントに返事する時間はなかった。そう言えば、公人くんとの約束―


 映画、なに見よう。


 上映情報を前もってチェックしておこう。公人くんならきっと、オレに合わせたのをみるだろう。


 そんな気がする。


 中間テスト明け。


 なので―


 授業は軒並み『テスト返し』だ。テスト勉強あまり出来なかったけど、そんなに悪くない。


 安心するオレの視界に、頭を抱えてうずくまる京子が目に止まる。そういや妹のみやびが言ってたなぁ。


『自分もバカのクセに偉そうに言う』と。


 残念な結果だったんだね。そういや、勉強してる素振りもなかったけど、実際にしてなかったのか。


 いさぎよい、男前だよ。


 そんな風景が2時間目、3時間目と続いた。


 どうやら3連敗みたいだ。普段なら『ドンマイ』的な発言もあるけど、今日はしない。


 もっと別の話をしないと―そうだなぁ、昼休み。


 昼休みしかない。放課後だと逃げられたり、詩音が加わると話せない。


 なんて話すか、そんなこと考えてないけど。


 そうこうしている内に、4時間目も京子は『撃沈』した背中を見せる。


 昼休みまで『息』があるだろうか、それが心配だ。





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