第111話 大人女子。

「つや姫が売ってない」


 スーパーでは仕方ないのか、山形県産『つや姫』他のお米もいいのだけど。


 なんだろ『贔屓ひいき』の物を食べてもらいたい時ってないだろうか。


 そのことを望ちゃんに言うと、少し考えて、近くにお米屋があると言い出した。


 そして行ってみよう、となった。歩いて行けるトコみたいだ。


 店はすぐに見つかった。幸いにもまだ開いている、個人の店だと早く閉まるところもある。


 店内に入るとすぐに見つかったお目当ての山形県産『つや姫』


「望ちゃんこれ―あっ」

「ん?どうしたんだ?」


「いや、望ちゃん『雪若丸』だ」

「雪?こっち?どう違うの」


「いや、雪若丸食べたことないんだ、どんなかなぁ」

「じゃあ雪若丸にしてみたら」


「今日はつや姫にしょう、望ちゃんに食べてほしいし」


 そんなこんなで山形県産『つや姫』を手に入れた。レジの隣のイスには白猫が呑気に眠そうな顔をしていた。


 望ちゃんがちょっかいだしても、出されるまま知らん顔してるようだ。


 買い物のうちお菓子何かが入った軽めの物を、望ちゃんに持ってもらいお米と牛乳なんかのどっしりするのは持った。


 マンションに帰ると早速料理に取り掛かった。


 オレの家はガスコンロなので、電気コンロ―IHヒーターっていうのか、初めてだ。


 幸いにも望ちゃんは、かろうじて使い方を知っていた。本人いわく『奇跡』だそうだ。


 ジャガイモ、ニンジンを袋から取り出し洗う。


 玉ねぎは4等分に切って頭の根を落しすと皮をむく手間が少し減る。


 料理するところを、望ちゃんはじっと見てたのでふといつものクセで言ってしまった。


「先にお風呂入っちゃったら」


 家ではそうする、オレが料理をしているのを見ている陽茉ひまちゃんに。


 風呂を済ませておけば後楽だし。しかし、ここは家じゃなかった。


「や、やっぱりその、そういうことになるのかな」


「そういうこと?」


 真っ赤な顔の望ちゃんを見て、オレは慌てて平謝りに謝った。


 家では風呂待ちが出来るから、姉にはそう言って先に終わらせてもらってること、それとまったく他意はないと。


 オレの慌てっぷりを見え『それが紳士のたしなみかとおもったぞ』とからかわれたが、そんな言葉をオレの耳には届かない。


 イタズラめいた表情で『ではお言葉に甘えて』とバスルームに消えた。


「大人女子、あなれん」


 オレは意味のわからない、つぶやきを吐いてお米を研いた。


 ふたり分だよな、2合は多すぎよな。


 1合半か?それでも多いか。1合にしておこう。余っても一人暮らしだと困るかも。


 冷たい水でお米を研いていると、よこしまな心が洗い流されていくようで、助かる。


 オレはジャガイモの皮むきを、短縮するために包丁で表面にバツを入れて皮ごと鍋で湯がいた。


 もちろんよく表面を洗っておいた。


 自宅デートというより、オレが普段家でしてることと、たいして変わらない。


 それはそれで楽しいけど。


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明日より1日2話更新を

1日1話に変更します。

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