第88話 察し。

「心配御無用です」


 なんかよくわからないポーズで言われた。もちろんみやびにだ。


 時間は夜の9時『JC』を連れ回すになちょっと遅い。


 どこが『心配御無用』なのだ。たずねると。


「実はうちの母なかなか口うるさいです。おねぇを見ていただければ、して知るべしなのですが―」


 こいつよくわからん日本語をポンポン放り込む。


 ホントに『バカ』なんだろうか。成績は悪いみたいだけど、頭は悪くない。


 話していると逆に『頭いい』と感じる。


「先程からちょいと、母にはメッセージを送ってました。おねぇに泣かされた。この間泊まった『詩音さん』のお友達『男子』と、ファミレス・ナッシュビルでご飯食べた。いつでも迎えに来て」


 みたいな、にゃん。


 よくわからんリアクションで得意げ。そして解説。


「うちの母は『動機』と『所在』と『要求』をはっきりさせたら怒りません。『動機』おねぇに怒られた。『所在』はここナッシュビル。『要求』は迎えに来て、です!そこからの『駐車場に着いた』のメッセージ!そんなわけで、帰ります!亮介さん、おさらば」


「待て待て待て、みやびちょっと!お母さん来てんだろ?挨拶する」


「娘さんと交際してます、みたいなヤツっすか?一応受験生なんでこのタイミング、ヤバくないですか、心象しんしょう的に?」


 難しい言葉を使いながらのポンコツ。どこか『アレ』なのは北町家女子の伝統芸能か?


「なんでおまえとのお付き合いの許可を取るんだ」


「あっ、ですよね。まだJC。ここはこっそりお付き合いしておいて、晴れてJKなってから―」


 オレは雅の寝言を聞いておれず、軽くデコピンをして席を立った。北町母をいつまでも待たせるわけには行かない。


 レジでは見たことない女の人が対応してくれた。流石に望ちゃんは上がったか。


「あれです」


 店を出ると雅は白のワンボックスカーを指差す。車内には女性の姿。ひとりのようだ。


 雅は気を利かせて小走りで先に走った。娘の姿を見た女性は車から降りる。どうしょ、微妙に緊張する。


 京子の親に会うのは初めてだ。緊張しても仕方ない。逃げないでスタスタと近寄り挨拶をした。


冬坂とうさか亮介りょうすけと言います。その娘さんとクラスメイトで、あの京子さんと―」


 京子のお母さんというには若く見える。若く見えるが京子、雅の母親であるとわかる、類似点を感じた。


『京子の?』お母さんはまぁ当然の反応だ。なんで京子のクラスメイトが妹の雅といるのか。その疑問を雅が埋める。


「おねぇと『ケンカ中同士』でご飯食べてた」


 それを聞いたお母さんは『あぁ』みたいな反応。何となく『察した感』が引っかかる。


 なんだろ。






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