第64話 オレしか知らない。
「駄目だよ」
「えっ、なんでよ」
「なんでって、
「『1番乗り』とは言ったけど乗らないわよ。なんで挨拶していきなり膝の上乗るのよ。陽茉ちゃん絡むとちょくちょくポンコツね」
「ホントに乗らない?」
「君なに警戒してんの。駄目なの紹介?」
「待って、聞くよ予定とかないか」
「いくら何でも長いでしょ」
オレは詩音に頼まれて陽茉ちゃんを紹介することになったのだが、いきなり連れて帰って陽茉ちゃんに予定とかあったら悪い。
そんな訳で先に連絡したのだが、詩音から思わぬ苦情、電話長かったかなぁ。
「あと『陽茉ちゃん』言い過ぎ、80回は言ってたわ」
そんなには言ってない、たぶん。
「京子に聞いてそれなりには覚悟してたけど、それなりの覚悟では足りないことを知ったわ」
「ちょっと話したくらいでめちゃくちゃ言うよな」
「ちょっとじゃないわよ、20分よ。家着くでしょ、なんで今から会う家族にそんなに話すことあるの?」
「いや、朝ぶりだし。元気かな、お昼食べたかな。お昼寝したいんじゃないかなぁとか色々あるだろ」
「もうシスコンの粋に収まんないわね。陽茉コンね、君シスコンのカテゴリーでは無理よ」
「陽茉コンか」
「なんで喜ぶ?まぁ、いいわ。あのここまでキテるとは、思わなかったから聞かなかったけど。実の姉よね?じゃなかったら勝つ要素ないわ」
「その血が繋がってるってこと?そうだよ」
「だからって、よかったにはならないのはなんでだろ」
この時期の昼過ぎになると、流石に日差しが強くなる。日陰が出来てるところを中心に自転車を押す。
それに気づいた詩音はすぐに『ありがと』と、なんか照れながら言う。そう言われるとこちらも照れる、それとなくしたことに気付かれると。
「どうだった、今日『
『
オレはなにもなかった顔して朝迎えに来たことや、望店長に前もって『付き合ってない』ことを言ったんで、佐々木以外のサポートがあったからやりやすかったことを詩音に言った。
「先週はまわりが遠慮してたんだね、私もやらかしたし―」
「それは、まぁ、アレだ」
「亮くん不安だよ。アレだけやらかした私を今君なにしてるの?」
「チャリンコの後ろに乗せて押してる」
「亮くん『
「オレからしたら―」
オレはゆっくりとチャリンコのチェーンの音を聞きながら息を吸って、軽いあくびをした。
「お前と佐々木を同じレベルに考えてるって思われてる方が不安だよ」
「それは―亮くん」
「それくらいオレはお前を理解してるってこと」
いい感じの風が吹き抜けた、気持ちいい。詩音は広がった髪を押さえる。
その仕草、舞い上がる風、初夏の
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