第59話 2度目の失策。

「あなたが亮ちゃんの彼女さん?誤解してほしくないわ、私は?」


「はぁ?仲よく。ムリ、パクってばっかの人とどうやって仲よくなれんの、むしろ教えてよ。あと、今だけちゃうし」


「別にパクってないわよ。ラブコメ書いたらパクリなの?異世界は亮ちゃんしか書けないの?あと、今だけに決まってる」


「キャラ設定、環境構成、人間関係、キャラの一文字被るまでやってパクってないって言い切るの、バカに何言ってもムダね」


「なに元カノ今日は元気ね。じゃあさ、なの?違うわよね、なんで私にだけ言うの?あと、誰がバカよ」


「じゃあ、アンタ。パクってへんゆーんやったら、新作先に出し。いっつも亮ちゃんの新作見てから出してるクセして。眠たいことゆーんやったら、亮ちゃんの前に1回でも出して今の数字出してみんか。10万文字まで今の数字維持できるんやったら仲良くしたるわ、あとダボが」


「いいわよ、そうね。そんなことで納得してもらえるんなら簡単。3日後には新作を出すわ、10万文字級の連載。それでいいかな?あと、ダボって何?」


 

「ダ――っ!ムカつく、ムカつく、ムカつく!!」


 ここはファミリー・ナッシュビル。オレたちはテスト終わりの空腹を満たしにやって来た。京順は部活なんで3人でだ。


 アレから佐々木はびっくりする程呆気なく撤退した『譲歩』を引き出し満足したのだ。そして挑発に乗った京子はのたうち回る。


「ちょっとうるさい、店よ。普段地味なクセして」


「地味言うな、バカ!」


 ふてくされる京子を尻目に詩音の口元はニヤリと緩む。


「失策続きよね」


「うっさいなぁ、わかったわよ詩音のチビ」


「胸は京子よりおっきい」


「はっ、亮ちゃん聞いた?嫌なやつだよ、落ち込んでるのに傷口盛り塩だよ」


「詩音、男子高校生に胸のこととか。―で、大っきいのか」


冬坂とうさか、ファレスで何言ってんだ。通報するぞ」


「望ちゃん。お疲れ様」


「お前この間まで『』だったろ。卒業したら迎えに来る気か、お待ちしてます。そんな健気なお前にはお得なクーポンをあげよう『旬の―シリーズ』おすすめな」


 オレたちは望ちゃんのオススメ『旬の―シリーズ』から注文した。望ちゃんは手際よくさばいて去ってゆく。


「ウチの人って、年上好きよね」


「知ってる、陽茉ちゃんコンプレックス。通称『ヒマコン』だもの」


 何だよ、別にいいだろ。今始まっまたんじゃないんだから。陽茉ちゃん好きなオレのこと好きになって貰わないと困ります。そこ注意な。


『それはともかく。この失策は終わりの始まりかも――』


 柚原詩音は特に表情を変えるでもなく呟く。お茶を啜りながら。












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