第25話 ゲスいよね〜

「その、亮ちゃんを散々な目に合わせた『』さんが何か御用?」


 おっと、いきなりの佐々木のギアが入った。


 京順によると『ちょっと頭がな時ある』らしい。それが今か!いけ!


「そんな初対面なのに褒めて頂き、光栄の至りですわ」


 詩音しおんのセリフ自体は照れている風ではあるが、表情、声の感じが『そんな当たり前のこと言われても、ポリポリ』な感じだ。


「亮ちゃん、私褒めたっけ?どの辺が誤解生んだのか具体的に知りたい」


「オレも佐々木に今聞くとこだった」


「なんで捨てた元カレに付きまとうの。すぐにカノジョ出来たの腹立つから?」


「カノジョ?――カノジョ…あっ、北町あのひとさん、カノジョじゃないです!」


「―だって。亮ちゃんどうなの?」

「カノジョだよ。なんでカノジョかどうか柚原が決めるわけ?」


「人によって表現はさまざまですからね。表現の自由?」

 にこりっ。とってもいい笑顔で詩音しおんが笑った。


「人によって表現がさまざま、か。じゃあ私も亮ちゃんのカノジョだよね、心配してバイトまでしてくれてんだから〜」


「佐々木は京順の彼女な、表現の自由関係ない」


「友達の彼女はむしろカノジョだよ!」

「何がムシロなのか意味わからん」


 いやいや、佐々木と遊んでる場合ではなかった。


オレはちょっと静かになった詩音が気になった。

『カシャ!』


 油断してるとスマホで自撮り、しかもオレとツーショット!?


「うわっ、元カノめっちゃゲスいね。今の自撮りどうするの?」


「とりあえずパソコンに送りました。デートしてる証拠……記念として!」


「今めっちゃ『証拠』って言ったよね」


 佐々木は呆れかえる。


オレは前から疑問で聞いてみることにした。


「柚原さん、ちょっと聞きたいんだけど」


「亮介さま、詩音とお呼びくださいな」

「あっ、じゃあいいや」


「もう―っ、照れ屋なんだから。まぁ、いいですぅ。なんですか?」


「振った理由。今更なんだけど。実はあんまり興味ないんだけど。聞かないと話進まないし――確かに別れたよね?」


 言葉にもしたけど『理由』なんてどうでといい。理由に納得したからどうなるとか、全然だし。


 ただ、佐々木が言うように『なんで元カレに付きまとうか』わかる気がした。


 オレは最後の言葉を思い出していた。

『ほんとうに楽しかった。さようなら。また、いつか来世で』


 今もう来世なの?詩音は満を持して口を開く。


「アレは別れてないですよ、アレは恋愛のわば『スパイス』です!押して引く手法?」


 にっこり!


「ダメだー。思ってた以上にゲスい!」


 付いて行けず佐々木咲乃は頭皮を掻きむしりのたうち回った。



























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