第20話 巻き込む勇気。

 それまでのオレは一般的な髪の長さだったが、形からも大事だと知っていたので極端な短髪にした。


 イカツさを出すためだ。


 自分で鍛える道を選んだオレはボクシングに対して興味が失せていた。


 自然公人くんとの交流は途絶えた。


 元々京順の知り合いでオレのじゃない。


 最初から公人くんは乗り気じゃなかったのでいい印象はない。


 この頃には陽茉ちゃんは部屋からもあまり出なくなっていた。


 オレの我慢も限界だな。他人事のように思ってたことを今でも覚えている。


 陽茉ちゃんは部屋から出ることも出来なくなっているのに、原因を作ったヤツは平気に学校に来ている。


 冗談じゃない。


 よし。そろそろやるか。そんな、気分だ。


 そんな気分で学校に行ってそんな気分で陽茉ちゃんのいない教室に行ってケリつけたらいい。


 腹くくったところに、招かれざる客。公人くんがきた。見るからにわかる。


 来たくて来たんじゃない。見てこい、そんな感じだ。


 嫌になる。


「会長がどうしてるか気にしてる」


 別に気にしてほしくない。この時分はテンプレ的にそう思った。


「公人さ、冷やかしならいいよ。別に」


 口を開いたのは京順けいじゅんだった。


 すさんでいくオレを京順は普通に今までと変わらず接してくれていた。


 京順にだけ話す胸のうち、焦り、怒りを。


「別に冷やかしじゃねぇし。京順お前もさ――」


「別に。亮介がそれでいいなら、オレはそれでいいんだよ」


ってなんだよ、止めるのがダチだろうが」


「いや、いいって。そういうの。正しいとか、常識とかさぁ。オレは亮介が同じ側に、暴走するならオレも付き合う。単純だろ?」


「なんだよそれ、バカじゃねえか。――亮介くん、京順巻きこむなよ。放課後迎えに来るから」


 この時はじめてかも知れない。


 京順の本音を聞いたのは。いつも飄々ひょうひょうとしていてどこかつかめなくて。


 でも、信じてくれてるんだろな。オレなら踏みとどまるって。


 でもそれを強要するでもなく、一緒に肩を並べて歩く親友――


 そう公人くんの言うとおり京順を巻き込んじゃ駄目だ。


 京順は巻き込もうとしなくてもオレが『行動』に出れば、共にするだろ。


 ずっと、頭に血が登っていた。


 それを冷静に理解した。理解して冷静に行動した。


 陽茉ちゃんが助かればいいんだ。


「京順助けてくれ」


 オレは京順に助けを求め、行動した。大人を巻き込む。


 まず担任に相談したい。昼休みだ。


 若い女性の担任だった。面倒くさがらずに昼をメシを抜いて話を聞いてくれた。


 オレの話をメモを取り真剣に。最後にこう言った。


「――頼ってくれてありがとう。冬坂くんのこと心配だった。お姉さんの担任、学年主任、あと職員会議で必ず議題に出す。心配しなくていいから、」と。




















 



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