第19話 陽茉ちゃん
『
よくラブコメにある『血の繋がらない』系姉弟ではない。よくある血縁のある姉弟だ。
陽茉ちゃんは昔からあまり喋らない。暗いとか人付き合いが苦手ではない。
正確に言うなら『文章を喋らない』だ。
基本単語なんだ。単語でも十分会話は成立するし何よりいつもよく笑ってくれる。
オレは陽茉ちゃんが好きだ。
誰より何より陽茉ちゃんが好きだ。
それは例えば
人としても異性としても家族としても大好きなんだ。
それはこの先も変わらないし変える気も変える自信もない。
簡単に人は『シスコン枠』と理解したがるが、そんな簡単な枠組みではない。
陽茉ちゃんは1つ年上で年子だ。
オレはいつも陽茉ちゃんに手を引かれて守ってもらいながら成長した。
ある日そのバランスが崩れた。
陽茉ちゃんが学校に行きづらくなる出来事が起きた。
陽茉ちゃんに好意を持った男子、いわゆる不良がしつこく陽茉ちゃんに付きまとったのだ。
それが時に強引な手段に出たりで学校に行けなくなった。
オレが中1で陽茉ちゃんは2年。
オレは陽茉ちゃんに事情を聞き出し、
公人くんは地元のボクシングジムに通っていた。
中学生的な発想だ『強ければ陽茉ちゃんを守れる』必死だった。
公人くんはオレたちの話にいい顔をしなかった。喧嘩のため、そう受け取ったのだ。
オレは喧嘩のためじゃなくて、陽茉ちゃんを守るためだと言ったが公人くんにとっては大差なかったと思う。
なんとかジムの会長に会うことは出来たが会長の反応は公人くんと同じだ。
何日も何日もオレはジムに通い頼み続けたが変わらない。
オレは笑わなくなった陽茉ちゃんに焦りを感じていて、このままじゃ駄目だと思った。
今のやり方じゃ陽茉ちゃんの苦しみに届かない。陽茉ちゃんの悲しみに寄添えない。
今日ダメならこのやり方はやめよう。そう、決めた。
そう決めた途端。じゃあ今日行くの無駄じゃねぇ?
そこからだ。別にボクシングがすべてじゃない、空手や、柔道もある。
いや、待て。別にそんなのに頼らなくても、
その頃には『何を御大層にもったいぶりやがって』そんな考えがオレの中を占めていた。
スポーツだからルールがあって、オレの目的じゃあ指導出来ない、理解したよ。
それくらいわかる。だから、いいって。もう。
目的が違うものに頼ろうとした自分が悪い。オレは陽茉ちゃんを守れたらそれでいい。
それからオレは闇雲に体を鍛えた。喧嘩の仕方なら動画から学べばいい。いくらでもある。
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