第21話 明日から練習な。

 約束したように公人くんが放課後やってきた。


 京順は少し安心して部活、バスケには行った。


 ジムに行くまでオレは特に何も喋らなかった。


 京順けいじゅんの思いで留まっただけで、この時は公人くんに対しては特に感情は無かった。


 ジムに着く。会長が話あるってコトだったから外で待った。


 中に入るのを禁止されていた。前に頼みに来たときのことだ。


 別に用事はない。陽茉ちゃんも家にいる分には心配ない。


 そうだ帰ったら陽茉ちゃんの部屋に行こう。出てこないなら行けばいい。


 なんでもかんでも陽茉ちゃんにして貰う気でいるのか、オレは。


 反省した。部屋から出れなくてもオレの顔見たくないなんて言われてないんだ。


「何やってんだ、亮介入れや」


 背後からしわがれた大人の声がした。会長だった。


 オレに手招きをしている『さっさとしろ』そんな感じだ。


 はじめて入るジムの中、何人かは練習をしている。


 汗のニオイ『キュッキュッ』と響くシューズの裏。


「公人がうるさいんだ」


 浅黒く痩せた中年は吐き出すように言う。実際ため息は吐き出していた。


 公人がうるさい…


 公人くんは『会長が話がある』って。もしかして公人くんは会長に頼み込んで…オレは練習中の公人くんを見た。


 あっ、目をそらした、アイツは―


「―でどうなった、ねえちゃん。どんな塩梅あんばいだ?学校まだ行けないか?」


 オレは特に変わってないこと、と。今日オレが担任に相談したことをはなした。


 会長は2、3度頷いて「よし。カケル!」と叫ぶ。会長の息子だ。

「会長、何か」


 カケルと呼ばれた長身は父親を『会長』と呼んだ。顔を流れる汗をタオルで拭っていた。


「明日学校。何人か連れて話つけろ」


 カケルさんはオレの顔を見てチョット呼吸してから口を開いた。


「公人、透、陣内。ちょっと来てくれ」


「知ってるな。亮介が困ってる。明日朝下駄箱で。話付けに行く。手は出すな」


「はい!」


 話はそれっきり終わった。


 帰り際会長にオレは礼を言って、練習中に悪いとは思ったがみんなに礼を言って回った。


「亮介、練習明日からな」


 帰る背中に会長は言った。


 翌朝約束した下駄箱で合流し、陽茉ちゃんの教室に。


 カケルさんとジムの仲間に京順が加わった。


 カケルさんは3年だった。


「何が言いたいかわかるな」


 カケルさんは口下手だったがその分重みもあった。


「亮介は俺らの仲間で、お前がしてることは知ってる。もうするな。文句あるなら今言え」


 話は一瞬だった。静まりかえった教室、鳴り響くチャイム。


 男は弱々しく『わかりました』と。仲間が教室を出た後もオレと京順、公人くんは男の席の周りに残った。


 オレは印象付ける必要があった。


『オレは見てる』と。


「行こう――」そう言うまで男は顔を伏せたままだった。



















 

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