第4話 何がいけないんだろ?

「オレひとりの時、大体小説書いてんだよね」


「えっ!?」


 そう。これがごく普通の反応だ。普通に生きてる高校生男子が小説を読んでも書くことはあまり無い。


 少なくとも人生でそんな趣味を持ったヤツに出会ったこと、なかった。


 風が吹いた。荒々しくザワザワする風。


 それでも心地良い風。

 

 はじめて出会った同じ小説を書く人に。


 さっき「趣味」と言ったが実は照れ隠し要素満載だ。


 趣味じゃない「がち」だ。「がち」でオレは小説を書くことにのめり込んでる。


 だから余計に。そんな知り合いはいない。ネットではいる。割と。


 全国、全年齢となるとかなりいる。でも、面と向かって話出来るはじめての相手が北町京子だ。


 そして今その北町京子が「SNSのトーク」で連絡を取ってきた。


 風呂から…


「ちょっと待ってね。頭流しちゃうから」


 あの地味系女子が大胆にも男とSNSでトークしながらシャーワを浴びてる。


 普通。


 全裸だよな。


「ごめん、お待たせね。冬坂くん」


 うわっどうしょ。SNSトークの音声の「荒さ」がかえってシャーワの臨場感をアップさせてる。


 えっと、これって「付き合ってる」のかな?いや何もそんなこと触れてないよな。


 ふっ、触れる!?どこにだよ!


 ヤバい体の一部がベリーホット。


「あのね〜、冬坂くん。お願いがあるんだけど、いいかなぁ」


 間延びした声が浴室の湿気でいい感じのエコーがかかり、一緒に風呂に入ってるような錯覚。


「お願いって、なに?」


 まさか一緒にお風呂に入るとか?いや、それはオレからの「お願い」だ。


「私の何がよくないとおもう?」


「よくない?」


「そう、小説。何がよくないのかなぁ、PV上がらない理由」


 あっ小説の話ね、そう小説。


 まいったなぁ。苦手なんだ意見求められるの。


 みんないいと思ってる書いてると思うんだよな、それにダメ出ししたりして書けなくなったら―そう思うと…何も言えないんだ。


「冬坂くん。答えに困るほどひどいのかなぁ、私の話」


 オレの沈黙が違う誤解を生んでしまった。


 せっかくはじめて出来た小説仲間の相談なんだ、答えなきゃ。


「あのね、オレも毎日悩んでて今から言うことが明日になったら変わってる、そんな時もあるよ?いいの」


「あっ、うん、そういうのが聞きたい」


 北町の入った湯船のお湯が跳ねる音がしたが、集中だ。集中。


「内容については触れないけど、その好きずきだと思うから」


「うん、お願い」


 オレはスマホの前で正座した。


「北町の話。1話って何文字にするか決めてるかな」


「特には決めてないかも。何文字にしょうって発想なかったし。決めたほうがいいのかなぁ?」


「これってオレのあくまで個人的な意見なんだけど。決めた方がいいかなぁ」


「聞いていい?冬坂くん」


「うん」


「なんで決めた方がいいんだろ?」


「長くなるかもだから、あがったら。風呂のぼせるよ」


 オレは電話口の北町にそう伝えた。


















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