第4話 真っ黒い感情
結婚生活をスタートさせて間もなく、
初めて他人と暮らすだけでも大変なのに、
近距離に住む義理の両親にも散々悩まされた。
初対面に感じていた嫌な予感は見事に的中。
長く関わってわかったことは、
親離れ、子離れができないままでいること。
初めて家に行った日の
「人も空間も昔のまま時間が止まっているような感覚」
は、そういうことだったんだと思った。
親が息子(夫)に接する態度や言葉、
息子(夫)もそれに違和感を感じることなく受け入れる。
まるで小学校低学年の親子を見ているようだった。
そして義理母は、
会うたび口癖のように言う。
「ほんとにうちの子は優しいから。」
わたしから言わせれば、優しさの本質をわかっていますか?
と言いたい。
わたしが見てきた夫は、明らかに人として大事なものが欠けている。
相手はどうだろう?という想像力がない。
上辺だけで、口だけで気遣ったことを言っても、あくまで口だけ。
わかりやすく例えると、
妻が夫に「疲れてるから、家事やだな。」
と言ったとき
夫は「そんなに疲れてるなら無理しなくていいよ!明日でいいじゃん。」
と言う。
わたしは頭の中が「???」でいっぱいになる。
同じ働くもの同士だけど、子育て・家事はほぼわたしだ。
義理母が甘やかしてきたおかげで、
一度も実家から出ることなく、
おかあさんにお世話してもらうことが
当たり前すぎて、
夫は本当に何もしないし、できないし、
そもそも気がつかない。
部屋は片付いていて当たり前、
お風呂は掃除してあって当たり前、
トイレは綺麗で当たり前、
仕事から帰ってきてだらだらしてる間に
夕飯が目の前に出てくるのは当たり前、
そんな日常だったせいだ。
もし夫が、結婚せず一生実家にいた場合、
両親が亡くなった後、目も当てられない老後をおくる大人に仕上がったんじゃないだろうか。
夫は、今まで自分の身の回りのことをやってこなかったのだから、
それをやっている相手の大変さが分からない
大人だったのだ。
わたしから言わせれば、
今この瞬間楽をしても、明日にまわした家事は、結局自分がやるのだ。
本当に相手が疲れていることを思いやれる人なら、
「今日は俺がやろう。何をやったらいい?」と聞いてくれるのが優しさだと思う。
そんな夫の相手だけでも大変なのに、
それを超える負担をかけてくるのが
義理の両親だ。
とくに義理母。
結婚してすぐに携帯番号とメールアドレスを交換したいといい、さらに実家の鍵を渡してきた。
これを見た夫は、当たり前のように私たち新居の合鍵を渡す。
わたしに相談もなく。
正直わたしは、嫌だった。
でも、断れなかった自分も悪いのだが…。
毎週、週末になると義理母から食事のお誘いがきた。
たまたま週末私たちに用があったりして、
2週間続けて断ったりした日には、
義理母から夫婦同時に恐ろしいメールを送ってくる。
「しばらくですが、元気にしてますか?
そちらはお変わりないですか?」
と。
たった2週間会わない程度で。
わかる人にはわかるとおもうが、
遠回しな嫌味だとわたしは感じた。
それはなぜかというと、
夫はこのメールが来ると必ず
「この週末は実家に行こう」という。
そして義理母に、
「貴方たちがいつ来てもいいように、〇〇買って用意しておいたのよ。
全然こないから、保存しておいたわ。」
と。
こちらがお願いして用意してもらったわけでもないのに、声の感じが威圧的なので、全く悪いことはしていないが、なんだか悪いことをしたような気分にさせられる。
こんな感じなので、義理母からの
「お変わりないですか?」メールは、
「なんで週末来ないのよ。」とでも言いたいのだろう。
義理母は、良くも悪くも無邪気な子どものように物事を考え発言する。
自分の思い通りにならないと、
わかりやすくあからさまに不機嫌になる。
ダダをこねる子どもを見ている気持ちだ。
これ以外にも、ことあるごとに私たち夫婦に義理母はべったりだった。
もちろん、夫も親にべったりだった。
それは、見た目でベタベタではなく、
精神的な歪んだ繋がりという意味で。
基本夫は、義理の両親に言われたことはどんなに小さな事でも気にとめ、気を使い、対応する。
(わたしの両親への気遣いはゼロなのが実に腹立たしい)
義理母の親戚の家に頻繁に行く機会があり、お互い車があるというのに、いちいち夫に「車はどうしましょ?」と義理母は相談してくる。
すると夫は当たり前のように、「一緒に一台で行けばいいだろ。」
という。
厄介なのは、義理母と夫は依存しあっているのに、夫は義理母によくイラついている。
頻繁に実家へ行って食事をするが、
夫はほとんど両親と話さないし、
笑って会話をしている場面を見たことがない。
親といると常に不機嫌になるのだ。
だったら、会う頻度を減らせばいいものを、
お互い共依存しているから、できないのだろう。
こうやって日々の小さな出来事から大きな出来事まで、義理の両親のことで、わたしの中に真っ黒い感情がぐんぐん育っていく。
わたしだって、こんな感情を持ちたくないし、「夫の両親に、そんな感情をもってはいけない。」とわたしの中の良心が、私に言ってくる。
良心と真っ黒い感情の狭間で苦しんだ。
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