<破> 竜の巫女・上
―― 巫女は自らの身を捧げ、自らを人柱として邪悪なる竜を封じた ――
やがてそれは「竜の巫女伝説」として語り継がれた
「くそ! あの野郎、俺が
100年――。
外の世界ではそれだけの時間が経過していた。
俺を封印した魔導士ゲイル・ガイザス。奴への復讐の為、出てきたというのに。
50年、いや100年もの
この
「
「泣いてなどいないわ。断じて」
「
「よせ……。そういう気分ではない」
「良かったではないか? 既に死んでいる。……手間が省けた」
「そういう問題ではない」
「なら…ば?」
「わからん……。
――そういえば、あの吟遊詩人〝ヤツには子孫がいる〞と」
「あぁ、言っておったな。代わりに子孫を根絶やしにするのか?」
「悪魔のようなことを……。平気で言うのだな」
「そりゃそうじゃ。
「まぁ、だがそれも悪くない。――よし、明日出立する」
「子孫を探すのかえ?」
「いや、もう一つの方だ」
「もう一つ?」
「あぁ、
◆
100年という歳月は世界を激変させた。
魔王が
「この洞窟か?」
「間違いないじゃろ。異常な邪気が溢れておる」
どうやら天井が吹き抜けとなっているようだ。
そして、その中心部に一つの石像があった。
勇者の俺は魔道士となり、この世界へと戻ってきた。
皮肉にも、俺を封印した魔道士が「封印の
既にこの世を去っていると知った。だが、それと同時にもう一つの伝承を知る。
――封印の勇者の仲間であった聖女さまが、
竜の巫女伝説、その伝承の地を訪れている。
「あれが人柱の聖女さま……かえ?」
猫の姿のミイアは、俺のフードの隙間から這い出て頭を出す。
「どうやら来て正解のようだ。あれは俺のよく知る顔だ」
正面を見つめていると、頭上より邪悪なる気配を感じた。
「おいおい。どうなっている……。伝承と違うではないか」
「その様じゃのっ」
ミイアは
「「
俺は竜の行動を先読みし、左腕を突き出して防御魔法を発動させる。
案の定、竜は
だが、防御魔法で受けた際に違和感が生じた。
「おいおい。
羽ばたくことなく空中で静止し、竜は
徐々に俺は左腕の感覚がなくなってくる。
「嘘だろ? 土属性の防御魔法だぞ!?」
防御魔法を突き抜け、俺の左腕が石化し始めたのだ。
「「
フード内からちょこんと顔を出し、ミイアが魔法を放つ。
風は更に洞窟内の上昇気流と融合し、
「
あれは呪術に近い。良いか? 喰らうなよ」
「不意を突かれたからだ。言われるまでもない。二度と喰らわん」
【封印】・【石化】・【凍結】・【麻痺】・【昏睡】・【洗脳】・【毒】・【酸】
これらは不死の俺にとって、いわば天敵。
故に、封印された世界で対策をずっと練っていた。――復讐の為に。
100年の封印など、二度と味わいたくない。
石化している左腕をそのまま突き出し
「
「ほお? 防御魔法を5つも」
「いや、まだだ」
≪ 五重障壁化 ≫
防御魔法を重ね合わせ、一つの魔法障壁として融合させた。
「さすがは、我が
「直ぐに手の平を返すのだな……。肉球が可愛いのは認めるが」
「
「そこまでは言っていない……が?」
猫の世話をしている間に
かなり
「キイイイイイイイイぃぃぃぃぃ!!!!」
その図体とは裏腹な甲高い奇声が、洞窟内を走り抜けていった。
俺は腰を低く落とし、身構える。そこへ竜の
どうやら、五重障壁は巧くいった。石化せずに耐えている。
ならば、今の内に攻める!!
――
「「
その灼熱は五重障壁をも越え、広場の空気までも熱した。
竜は羽を広げ、炎を消そうと暴れ出す。
体を洞窟へと擦り付けるも、それくらいでは消えない。
耐えかね、炎に焼かれたまま飛び立っていった。
五重障壁は健在で機能していた。
それにも
「おかしい。効いていない」
「だから言ったであろう。……呪術に近いと」
「おかしい。聞いていない」
「やれやれ……」
「
聞いていないぞ……これでは倒す
ミイアは何故か、呆れたという素振りをする。
「まぁ、
俺は静かに頷く。
「リスクを取って掛けるかえ? 動きを封じている
「そうだな……。リスクは取る……。
だが、まずはロー・リスクでハイ・リターンから試すさ」
つづく
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