63.なんで知っとるん?

「何だバカヤロウ!」


「何見てんだよ!」


「文句あるか!」


「何だバカヤロウ・・・・」


 徳川家康とくがわいえやすさんと徳川四天王のみなさんは、めっちゃ怖いおっさんの酒井さかいさんの号令に合わせて、一糸乱れぬ抜群のフォーメーションで、大阪城の大広間から出て行きました。


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徳川とくがわ仕置しおきや!! 今からすぐに徳川とくがわ関八州かんはっしゅうを軒並み仕置しおきや!!」


 ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんは、めっちゃ荒ぶると、三成みつなりさんは、大慌てでおじぎをしました。


「ははぁーーーーーー!!」


 おじぎして、たくさんの三成みつなりさんの同僚さんたち(要するにお客さんのほとんどです)と一緒に、大慌てで大阪城の大広間から出て行きました。

 ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんを中心に、一糸乱れぬ抜群のフォーメーションで、大阪城の大広間から出て行きました。


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「ごふぅ・・・・・」


 わたしにヒザまくらされた、小早川こばやかわさんが、また吐きました。

 今度は、ゲロやなくて、血を吐きました。黒く濁った血を吐きました。


小早川こばやかわさん!」


 わたしは大慌てで、三成みつなりさんが「わっさぁ」言わして残してくれたハンカチで、小早川こばやかわさんの血ぃ吐いて血まみれになった小早川こばやかわさん顔と服をキレイにしました。泣きながら顔と服をキレイキレイにしました。


 キレイキレイになった小早川こばやかわさんは、うっすら口を動かしました。くちびるがうっすら動いてました。


 わたしは、大慌てて小早川さんの口もとに耳を近づけました。耳の匂いがいでもらえるくらい、小早川こばやかわさんの口もとに耳を近づけました。


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「XXXXXXXXXXXX(ピーーーーーー)」


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 なんで


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 なんで知っとるん?


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 わたしがたった一曲だけ、センターをやらしてもらった曲のタイトル。


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 なんで知っとるん?


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 なんで?


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 知っとるん??


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 なんで? って思いながら頭が真っ白になってると、いつの間にか小早川こばやかわさんが、息してないの気付きました。耳の匂いをいでもらえるくらい、耳近づけとるのに、息しとらん・・・なんも聞こえん。


 小早川こばやかわさんが、みるみる冷たくなって行くんがわかりました。みるみる硬くなって行くんがわかりました。


 みるみる硬くなる小早川こばやかわさんに策伝さくでんさんが気がつくと、大慌てで叫びました。

         

徳川とくがわはんは、医学にさとい()!

 バナナの毒が感染するかもしれん()!

 今すぐ荼毘だびに伏せた方がええ()!」


 策伝さくでんさんが叫び声をあげると、三成みつなりさんが、ふたりの同僚さんと一緒に大慌てで走って戻ってきました。

 

 同僚さんは、わたしから小早川こばやかわさんを引き剥がすと、熱湯風呂を隠すんに使った白い布を、「バサァ」言わして、小早川こばやかわさんをグルグル巻きにしました。


 三成みつなりさんと同僚さんと、言わしとる策伝さくでんさんは、グルグル巻きになった小早川こばやかわさんを抱きかかえて、一目散に大阪城の大広間から走り去って行きました。


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 わたしは、ボーッとしてました。


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 大阪城の大広間で、ボーッとしてました。


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 若道にゃくどうの話を聞いてる時の、ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんみたいに、ひとり取り残されて、ボーッとしてました。


 大阪城の大広間に残っとたんは、わたしと、ミュージシャン席におる、山三郎やまさぶろうさんをはじめとする、バンドメンバーの皆さんだけでした。


 バンドメンバーの皆さんは、わたしが一曲だけセンターやらせてもらった曲を、鼓と三味線とお琴で演奏してくれました。ゆっくりぃなテンポで、まるで小早川こばやかわさんの霊を慰めるみたいに、ゆっくりぃなテンポで、わたしがたった一曲だけセンターやらせてもらった曲を演奏してくれました。


 わたしは、大阪城の大広間で、たった一曲だけセンターやらせてもらった曲を聞きながら、ボーッとしてました。大阪城の大広間のセンターで、ボーッとしてました。 


 ボーッとしてるのに、怖いくらい涙があふれてきました。大阪城の大広間のセンターで、怖いくらい涙流してました。

 大阪城の大広間のセンターで、たった一曲だけセンターやらせてもらった曲を聞きながら、ボーッとして、本当に怖いくらい涙流してました。

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