05.策伝さんスゴイ。あと、話長い。

「そんなわけで、バナナですべって、わたしは、いまここにおるんです」


「ほんまかー!?」


 わたしが話を終えると、間髪入れずに、ちぃちゃいゴリラの豊臣秀吉とよとみひでよしさんが、ツッコミを入れてきました。


 わたしは、「笑ってたらどうにかなるかな」と思ってニコニコしてると、


関白かんぱくはん、まちがいおまへん!」


と、策伝さくでんさんが大きな声で返事をしました。


 背が高くて顔が長い、お坊さんの策伝さくでんさんが返事をしました。


 あ、ちなみに、『関白かんぱくはん』は、ちぃちゃいゴリラの豊臣秀吉とよとみひでよしさんのことです。わたしも、策伝さくでんさんから関白かんぱくはんと言えと、きつく注意されました。でも、豊臣秀吉とよとみひでよしゆうたら、普通は『太閤たいこうはん』や思うんやけど・・・へんなの。


 背が高くて顔が長い、お坊さんの策伝さくでんさんは話を続けました。


「わすれもしません! 私がソロリちゃんと初めて会うたんは、備前びぜん国に建立こんりゅうしとる大雲寺だいうんじに、あらかた目処めどがついて、一旦、きょうに戻ろうとした時です。


 ちょうど、さかいせきの手前に、ソロリちゃんは倒れはっておった。壬辰じんしん月、戊辰ぼしん日、朝五あさいつつつ・・・すなわち『たつの刻』ですわ。


 よう覚えてます。不意に地震が起こった思うたら、草むらにソロリちゃんが、倒れこんどった。さっきまで、何もない場所に、いきなりソロリちゃんが倒れとった・・・せやなソロリちゃん?」


「そうでーす。」


 ・・・わたしには、策伝さくでんさんの言うてることは、わけわからんです。でも、「笑ってたらどうにかなるかな」と思って、ずっとニコニコしています。


 策伝さくでんさんは、話を続けました。


「さっき、ソロリちゃんが言うてはった、2018年11月2日・・・あれは、南蛮なんばんごよみですわ。干支かんし七度廻ななどめぐった、戊戌ぼじゅつ年、壬戌じんじゅつ月、戊戌ぼじゅつの日の宵五よいいつつつ・・・つまりは『いぬの刻』ってことですわ。どえらい未来ですわ。」


 わたしはずっとニコニコしています。もちろん、さっぱり意味がわかりません。


干支かんし七度廻り、つきこく、いずれも七冲しちちゅうなれば、凶気きょうき大なりは必然!」


 ちっちゃいゴリラの関白かんぱくはんは、ゴクリとツバをのみ込みました。策伝さくでんさんは、さらに大きな声を張り上げます。


土用どように地面は揺らぎます! 凶気きょうき大なり時、不運にもバナナですべったソロリちゃんは、干支かんし七度廻る未来からこの時代に飛ばされたんですわ!」


 広間は、シーンと静まり返りました。みんな、策伝さくでんさんの気迫にビビったみたいです。


 わたしは思いました。策伝さくでんさんスゴイ。あと、話長い。



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