3話

 たびたび、繰り返しになってしまうが、僕は、朝ごはんを家で食べない。

この先の曲がり角の先で、みどりとぶつかれば食パンをゲットできるからだ。


「ゴチん!」


 頭と頭がぶつかる鈍い音と一緒に、呑気な声が聞こえる。


「おはよう! うん、今日も無事にパンが増えた」


 幼なじみのみどりが、頭をさすりながら僕にパンを渡す。


 みどりと一緒に、中学校にいく。けれど僕は、今日、ちょっとギクシャクしていた。


 昨日、パンの「オマケ」についてきた、ラブレターを読んでしまったからだ。



「前田くんへ

 突然手紙だしちゃってごめんね。

 もし良かったら、明日の放課後午後5時に、

 焼却炉の前にきてくれませんか?

 おねがいします。

                    岡田みどり」



 とても、短いラブレターだった。

 厳密には好きともなんとも書いていないけれども、どうみてもラブレターだった。


 きっと、今日、みどりは前田湊人まえだみなとに告白するんだろう。

 湊人みなとは、バスケ部のイケてるやつだ。オマケに性格もいい。要するに女子にモテる。


 そして、僕は知っている。湊人みなとはよく、みどりのことを見ている。教室でスキさえあればみどりのことを見ている。


 みどりのことを、ずっと見ている僕には、湊人みなとの視線がよくわかる。多分・・・いや、間違いなく、みどりの告白は成功するだろう。


 思えば、みどりは、背が高いイケメンが好きだった。アイドルグループやアニメのキャラクターなんか、絶対に一番背が高い「イケメン」を好きになる。



 正直にいってしまおう。「背が高い」という基準だけなら、僕は、湊人みなとより背が高い。


 僕は、ここ二ヶ月で急激に背が伸びた。いきなり10センチ近く伸びて、あっという間にみどりを見下ろす背の高さになった。今はもう、湊人みなとと比べても、1センチだけ勝っている。


 でも、どうやら、みどりの基準だと、僕は「イケメン」には属さないらしい。残念ながら。


 湊人みなとに嫉妬している?


 いや、そんなことは断じて無い。神に誓ってない。


 じゃあ、みどりの恋の行方がどうなって欲しいかって?


 そんなの全力で応援するに決まっている! みどりが、幸せになって欲しいに決まっている!


 僕は、小学校4年の「あと時」から・・・交通事故で、心臓がいつもと違う場所に飛び跳ねた時から、みどりを応援すると決めたからだ。


 だから・・・今日は・・・学校が終わったら、僕、ひとりで帰ろうと思う。

 





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