5 スライム運用法1

それから私は1週間ほど、母さんから魔法をレクチャーしてもらった。

母さんは私をよく褒めてくれる。

それが私のやる気に繋がり、本来なら1ヶ月でやるような内容も、こうしてあっさりと終了したのだった。

ただまあ、サキュバスの使う「淫魔魔法」が主な内容だったのが残念だが。


「淫魔魔法」をたくさんの淫魔魔法が使用できた。

最初に母さんが私に見せた魅了の魔眼。

対象を催眠状態に陥れる催眠の魔眼。

周囲に発情フェロモン(浴びると発情する)を散布する淫霧いんむ

自由に動かせる触手を召喚する触手召喚。

対象を自在に動かす念動。


意外にレパートリーは多かった。というか全体的にエロい物が多かった。

そりゃサキュバスだから当然か。

中にはぬるい炎を発生させる魔法もあるけど、何に使うのかはよくわからない。


個人的にはやはり「淫魔魔法」よりも「火炎魔法」をもっと覚えたかったのだが、母さんは「火炎魔法」のフレアしか使えないらしく、私はこれ以上見て覚えることができなかった。


こうして魔法の基礎を覚えた私は、そこから何年か自力で魔法を習得しようと試みた。

やはりどうしてもサキュバスにはなりたくない。

私は必死の思いでたくさんの魔法を見て覚えた。

サキュバス街の客(冒険者)の後をこっそりついていって魔法の戦闘を覗いたり、自分で森まで足を運んで魔物と戦ったりしたこともある。


魔物とは、知性を持たない魔法生物のことを指す。普通の動物とは違い、魔力を体内にたくさん貯蔵している。

そのため、一部の魔物は魔法を使ってくるのだ。

前世でやったゲームにいた雑魚モンスターのスライムとかも、この世界に似たような魔物として存在する。

見た目、透明な餅のような形をした不定形の魔物だ。色は微妙に個体差があるらしく、その色によって使ってくる魔法が違うのだ。


ちょっと赤目のスライムは「火魔法」を、という風にだ。


これは魔法を覚えたい私にとっては好都合。母さんは「火魔法」しか使えないので、他の属性魔法が気になっていたのだ。


半ばコレクター気分でスライムを探し出し、「水魔法」「土魔法」「風魔法」「光魔法」「闇魔法」の全てを習得するに至ったのだ。

私は運がいいのか、6大元素魔法全てに適性があるらしかった。まあ、その中でも得手不得手は存在するんだけどね。


「水魔法」「土魔法」「風魔法」を使うスライムは案外さくっと見つかったのだが、「光魔法」「闇魔法」を使うスライムはなかなか出現しなかったので、いないのではと思ったこともあった。

しかし、スライムをよく観察しているうちにスライムの発生場所を特定することができたのだ。


まずスライムは、きれいな水を好んでいることがわかった。

そのため、私は一番水が綺麗な場所である川の源流まで上ることにした。

すると、たくさんのスライムがそこに存在するではないか。


水色、茶色、緑色のスライムがわんさかそこにいた。

魔法は使えば使うほど、習熟度が増す。剣の素振りと同じ要領だ。

私は、そのスライム群にフレアを放つ。


何匹はフレアをまともに食らい蒸発する。しかし、辛うじて避けたスライムも何匹かいた。

そこで私は新たなスライムの特徴を発見した。


私のフレアを受けたスライムのうち一体が、分裂したのだ。

しかもほんのり赤いスライムに変化して。

分裂元は水色のスライムのままだったが、こうして赤色のスライムがこのスライム群に加わった。

なにこれおもしろー!


どうやらダメージを受けた際、その魔法に耐性ができるように自らの細胞に働きかけて新たなスライムを生み出すようなのだった。

案の定、赤いスライムは「火魔法」を使ってきた。


スライムたちは正直言うと弱い。

だから私は、スライムたちの猛攻を受けながら魔法をじっくり観察した。

こうして戦っていくうちに「水魔法」「土魔法」「風魔法」をスキル化したのだった。


しかしまだ「光魔法」「闇魔法」が習得できていなかった。

この二つはどうやら使える魔物が限られているらしい。


しかし相手はスライムだ。スライムの特徴を生かせば、「光魔法」「闇魔法」を覚えたスライムが誕生するはずなのだ。

つまり、どこかにきっとこのスライムたちは存在する。


私は源流から少し離れ、たまたま近くにあった洞窟に侵入した。


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スライム……粘性の高い透明な不定形の魔物。物理攻撃に対してほぼ無敵の防御力を誇るが、魔法による攻撃には弱い。体内には核となるものが存在し、それを破壊することにより退治が可能。

ただ、核は常に体内を移動しており捉えることは非常に困難。中には核が複数存在する個体もあるようで、その場合核をすべて破壊しなければならないため油断ができない。魔法による攻撃には弱いとされるが、受けた攻撃に対して耐性を持つ個体に分裂することで対応してくる柔軟性もある。大きさは小型から大型まで存在し、種類も多数にわたる。小型の場合、範囲魔法で一気に殲滅可能なため脅威度は低いとされるが、大型となると途端に脅威度が跳ねあがる。見つけたら逃げるべし。

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