6 スライム運用法2

洞窟の中はほぼほぼ光が侵入しないため、入り口以外は真っ暗だ。


私は「火魔法」のトーチを発動させる。

「火魔法」は何も相手を攻撃するだけではない。こうやって光源にすることも可能なのだ。


トーチはゆらゆらと手のひらで燃えている。それをあらかじめ拾っておいた木の棒に移す。

この魔法の凄いところは、対象を燃やさないことにある。


これ、木の棒に移したからと言って木が燃えてるわけじゃないのだ。

だから長時間持っていても火傷しない。

便利じゃない?


私は洞窟の奥底まで進んでいく。途中なんどか蝙蝠の群れに遭遇したが、彼らは上空を飛び回るだけで私にぶつかってくることはなかった。


この洞窟、入り口は平坦ではあったものの途中から下り坂になっていた。それも次第に崖に近いような道のりになり、進むのが険しく感じられた。


しばらく潜っただろうか。水の音が反響して聞こえるようになってきた。

音源を頼りにさらに潜ると、そこには小さな湖があった。自然にできた地底湖だ。


「きれい……」


その絶景は私に衝撃を与えた。

地底湖の底はところどころ輝いており、その光が鍾乳石から落ちる水滴によって起きる波紋でゆらゆらと煌めく。


試しに私はトーチを消した。

すると、一瞬視界が真っ暗になるが、次第に地面に巨大な星空が現れた。

そのきらきらとした光源をよく見れば、それはスライムであった。


手のひらサイズの白いスライム。めっちゃ輝いてる。


私はそのうちの一匹を湖から引っ張り出し、棒でつつく。

するとそのスライムは反撃として「光魔法」を放ってきた。


待ってました!

それが見たかったんです!


スライムが放つ「光魔法」は謎の光球がゆっくりと飛んでくる技だった。

私はその「光魔法」を凝視しつつも回避。


しかし魔法ばかりに気を取られていた私は不覚を取ることになる。


なんと、光スライムたちがわらわらと集まってきたのである。

今や地底湖の光源だった彼らは私を取りかこんで、私が照らされて輝いてしまっている。

なんということだ。

スポットライトを浴びている気分だ。


そして私はソレを見逃さなかった。

とある光スライムのから、にゅうっと黒いスライムが現れたことに。


ほうほう、このスライムたちは共存しているということなのかな。

影から現れる……。

それが「闇魔法」の一種なのかな。


どうやら光スライムの3割くらいの影から黒スライムが出現しているようだ。

光と黒とじゃ、黒のほうが圧倒的に少ないらしい。


おそらく黒スライムは生物の影にしか生息できないのではないだろうか。だからこの暗闇の影には隠れられず、光源である光スライムに頼っていると……。

そんな適当な推測を立てているうちに、またもや光弾が飛んでくる。


その中に黒い球も混ざる様になるが、「光魔法」同様に速度が著しく遅いため難なく避けられた。


これを続ければ、二種類の魔法がスキル化できるぞ。

私は一心不乱に攻撃を避け続けた。



私は洞窟の外に出た。

流石にあのスライムたち全員を相手に戦うのは骨が折れるので、何匹かだけ倒して逃げてきました。

いや、決してビビったわけじゃないよ?

戦略的撤退なんだよ?

数が増えすぎて無理ゲーレベルな弾幕張られたから焦ったとか、そんなんじゃないよ?

私としては、地底湖の星空を保存したかったーっていう目的もあったしー?


とまあ、私はスライムを倒すというだけで6大元素魔法全てをスキル化することに成功したのだった。

はてさて、あとは冒険するには何が必要なのかな。


いずれはサキュバス街を出て外に出ようと画策する私。

わりと早めに動かないとお母さんによって私の貞操は見知らぬ男どもに奪われかねないので、必死なのだ。


私と同い年くらいのサキュバスの何人かが、既に働いてるらしいとも聞くので非常にやばみを感じている。

持ってあと3年かなあ。


それまでに私は必死こいて、旅の準備をするのです。

魔法のスキル化はできたことだし、あとは冒険者の情報でも漁りに行こうかな。

それには、冒険者に直接聞くのが手っ取り早いよね……?


この時、私が最初にコンタクトを図った冒険者が、まさかその後の私の運命を変えてしまうことなどは夢にも思わなかった。


フラムの『ステータス』

「火魔法」「火炎魔法」「水魔法」「土魔法」「風魔法」「光魔法」「闇魔法」「堕天」「淫魔」「淫魔魔法」「飛翔」「痛覚低減」「耐寒」

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